J-REIT市況月次レポート

J-REIT市況月次レポート　2020年11月

１．REIT全体市況

11月の東証REIT指数（配当なし）は、前月比+3.22%の小幅上昇。月前半は、米国大統領選による景気回復期待やワクチン開発の進展期待を背景に上昇した株式相場と同様に、東証REIT指数も上昇し、11日は1,735.38ポイントと1ヶ月ぶり高値を付けた。しかし月後半は株式相場が続伸し、日経平均株価が29年ぶり高値を付ける活況を示したのに対し、東証REIT指数は中旬に1,700ポイントを下回ると、1,680～1,700ポイントのボックス圏内の推移となり、株式相場と対照的な値動きとなった。
中期的に見ると、コロナショック以降の東証REIT指数は、TOPIXに近似した推移となっていたが、11月中旬以降の東証REIT指数は、株式相場の過熱感に追随せず、独自の展開となっている。
東証REIT指数が株式相場に対して出遅れている背景には、コロナショック以降投資口価格が堅調であった物流施設系銘柄と住宅系銘柄が軟調に転じ、指数の上昇を牽引していた用途が不在となったことが挙げられる。
物流施設系銘柄は、投資口価格の上昇を背景に公募増資が相次いだことで、投資口需給悪化が懸念となり下落に転じた。また住宅系銘柄は、コロナ禍をきっかけとした都心から郊外への転出者増加により、都心のポートフォリオを中心とする住宅系REITの稼働率が低下傾向にある点が、投資口価格の下落の一因と考えられる。
一方、オフィス系銘柄と商業施設系銘柄が比較的堅調であったが、未だ先行き不透明な点も多く、本格的な上昇基調には至っていない。

個別銘柄の価格では、ケネディクス商業リート投資法人が、前月比+16.11%の大幅上昇。当初コロナ禍の影響を保守的に業績に織り込んでいたが、生活密着型商業施設を中心としたポートフォリオでコロナ禍の影響が限定的であること、また保有する都市型商業施設を売却し、売却益を3期にわたって計上し、増配となる点が好感されたと見られる。
また2021年3月合併予定の日本リテールファンド投資法人とMCUBS MidCity投資法人はともに合併効果を見据えて前月比+10%超の上昇となった。
一方、大和証券リビング投資法人は前月比-12.14％、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人は-9.96%、SOSiLA物流リート投資法人が-7.64%の下落。いずれも公募増資を発表したことが嫌気された。

個別銘柄の動きでは、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人、SOSiLA物流リート投資法人、大和証券リビング投資法人、GLP投資法人の4銘柄が公募増資を発表した。物流施設系銘柄は足元の投資口価格はやや軟調に転じているが、長期的に見れば未だ高い水準である点や、物流施設の需給環境も堅調で各々スポンサーが開発を進めている点から、引き続き外部成長が続くとみられる。

大和証券リビング投資法人は、4月に日本ヘルスケア投資法人と合併後初の公募増資となった。合併により資産規模が2,200億円から3,000億円へ急拡大し、更に今回の増資によって資産規模は3,200億円が視野に入る。賃貸住宅の価格が高く取得が厳しいなか、開発型案件やヘルスケア施設等のリスクを取りながら利回りを維持し、スケールメリットや負ののれんを活かし合併後も積極的に規模拡大を目指す意向。

物流施設系銘柄以外で、保有物件を売却する事例が増加している。その背景には、コロナ禍の影響を受けやすいホテルや都市型商業施設を売却し、コロナ禍に適応したポートフォリオ構築を目的や、コロナ禍による減収分を物件売却益で補填する目的等、投資法人の置かれた状況によって様々である。例えばインヴィンシブル投資法人は住宅6物件の売却益計上によって、ホテルの賃料減額に伴う当期純損失を回避する。
またオフィス系銘柄では、投資口価格が低迷し増資が難しいため、外部成長せず物件入替えによる内部成長へ軸足を置く銘柄も出ている。オフィスビルや住宅は買い手も旺盛でREITにとっては高値で売却しやすい点から、当面売却事例が続くことが考えられよう。
このように、コロナ禍でも積極的に外部成長を目指す銘柄と、外部成長に慎重な銘柄と、方向感に違いが出ている。

＜市況データ＞

	2020年11月末現在	（前月末比）
東証REIT指数（配当なし）	1,687.98	+52.63
東証REIT指数（配当込み）	3,635.82	+123.39
時価総額合計	13兆5,463億円	+4,321億円
平均分配金利回り（時価総額による加重平均）	4.22%	-0.13

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2018年12月～2020年11月の24ヶ月間）

2．個別銘柄データ

2020年11月末現在
証券コード	投資法人名	投資口価格（円）	価格騰落率（1ヶ月）	予想分配金利回り	時価総額（百万円）	時価総額シェア
8951	日本ビルファンド投資法人	577,000	9.28%	3.87%	953,493	7.04%
8952	ジャパンリアルエステイト投資法人	542,000	5.86%	4.02%	750,784	5.54%
8953	日本リテールファンド投資法人	166,500	10.78%	5.45%	433,313	3.20%
8954	オリックス不動産投資法人	156,000	6.48%	4.38%	430,560	3.18%
8955	日本プライムリアルティ投資法人	306,500	8.50%	4.97%	293,704	2.17%
8956	プレミア投資法人	119,600	4.27%	4.70%	157,513	1.16%
8957	東急リアル・エステート投資法人	151,900	7.12%	4.43%	148,497	1.10%
8958	グローバル・ワン不動産投資法人	100,400	6.58%	4.78%	96,573	0.71%
8960	ユナイテッド・アーバン投資法人	118,000	6.02%	5.19%	367,964	2.72%
8961	森トラスト総合リート投資法人	125,800	0.96%	5.42%	166,056	1.23%
8963	インヴィンシブル投資法人	30,950	-6.92%	0.45%	188,697	1.39%
8964	フロンティア不動産投資法人	375,000	7.30%	5.49%	191,538	1.41%
8966	平和不動産リート投資法人	116,800	3.45%	4.54%	116,792	0.86%
8967	日本ロジスティクスファンド投資法人	295,000	0.65%	3.25%	266,997	1.97%
8968	福岡リート投資法人	138,900	9.98%	4.90%	110,564	0.82%
8972	ケネディクス・オフィス投資法人	662,000	9.60%	4.59%	283,674	2.09%
8975	いちごオフィスリート投資法人	70,200	4.00%	5.95%	107,567	0.79%
8976	大和証券オフィス投資法人	599,000	5.64%	4.57%	294,634	2.18%
8977	阪急阪神リート投資法人	120,500	4.69%	4.86%	83,772	0.62%
8979	スターツプロシード投資法人	195,300	-1.81%	4.64%	49,563	0.37%
8984	大和ハウスリート投資法人	251,300	3.89%	4.38%	551,855	4.07%
8985	ジャパン・ホテル・リート投資法人	51,400	2.19%	0.39%	229,365	1.69%
8986	大和証券リビング投資法人	89,700	-12.14%	4.82%	184,418	1.36%
8987	ジャパンエクセレント投資法人	124,200	8.00%	4.76%	168,043	1.24%
3226	日本アコモデーションファンド投資法人	577,000	-3.51%	3.46%	279,569	2.06%
3227	MCUBS MidCity投資法人	82,500	10.29%	5.48%	147,190	1.09%
3234	森ヒルズリート投資法人	137,900	7.32%	4.21%	264,262	1.95%
3249	産業ファンド投資法人	176,000	-0.90%	3.59%	364,323	2.69%
3269	アドバンス・レジデンス投資法人	301,500	-1.15%	3.67%	417,578	3.08%
3278	ケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人	178,100	4.34%	4.57%	169,419	1.25%
3279	アクティビア・プロパティーズ投資法人	390,000	3.45%	4.80%	300,777	2.22%
3281	ＧＬＰ投資法人	157,900	-1.93%	3.57%	628,913	4.64%
3282	コンフォリア・レジデンシャル投資法人	289,300	-3.18%	3.72%	194,301	1.43%
3283	日本プロロジスリート投資法人	327,500	-4.80%	2.90%	807,566	5.96%
3287	星野リゾート・リート投資法人	500,000	1.63%	2.54%	110,931	0.82%
3290	Oneリート投資法人	245,300	1.78%	5.94%	58,849	0.43%
3292	イオンリート投資法人	122,100	3.47%	5.21%	228,732	1.69%
3295	ヒューリックリート投資法人	141,800	3.35%	5.29%	186,042	1.37%
3296	日本リート投資法人	350,500	4.78%	5.96%	157,700	1.16%
3298	インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人	13,760	6.34%	5.38%	122,454	0.90%
3451	トーセイ・リート投資法人	107,400	3.57%	6.55%	36,570	0.27%
3309	積水ハウス・リート投資法人	74,600	2.19%	4.46%	319,934	2.36%
3453	ケネディクス商業リート投資法人	231,300	16.11%	5.80%	124,018	0.92%
3455	ヘルスケア＆メディカル投資法人	128,000	2.56%	5.01%	39,808	0.29%
3459	サムティ・レジデンシャル投資法人	105,700	5.49%	5.72%	67,574	0.50%
3462	野村不動産マスターファンド投資法人	136,000	9.15%	4.87%	641,267	4.73%
3463	いちごホテルリート投資法人	70,200	1.30%	2.39%	17,899	0.13%
3466	ラサールロジポート投資法人	156,200	-3.94%	3.81%	255,856	1.89%
3468	スターアジア不動産投資法人	48,100	8.58%	6.47%	80,538	0.59%
3470	マリモ地方創生リート投資法人	114,000	6.84%	6.11%	17,406	0.13%
3471	三井不動産ロジスティクスパーク投資法人	496,000	-0.60%	2.97%	268,832	1.98%
3472	大江戸温泉リート投資法人	68,500	-1.72%	5.62%	16,121	0.12%
3476	投資法人みらい	38,450	6.66%	5.98%	63,913	0.47%
3478	森トラスト・ホテルリート投資法人	115,400	7.15%	3.05%	57,700	0.43%
3481	三菱地所物流リート投資法人	398,500	-4.21%	3.25%	138,772	1.02%
3487	CREロジスティクスファンド投資法人	156,300	2.42%	4.16%	66,193	0.49%
3488	ザイマックス・リート投資法人	91,300	6.29%	5.70%	20,396	0.15%
3492	タカラレーベン不動産投資法人	89,600	7.56%	6.47%	41,440	0.31%
3493	伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人	128,400	-9.96%	3.87%	76,655	0.57%
2971	エスコンジャパンリート投資法人	113,000	3.20%	6.10%	31,977	0.24%
2972	サンケイリアルエステート投資法人	97,700	3.61%	5.49%	34,859	0.26%
2979	SOSiLA物流リート投資法人	124,600	-7.64%	3.86%	64,088	0.47%

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予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する

バックナンバー

※2013年11月以前のバックナンバー（PDF）はこちら

1	新宿三井ビルディング	1,700億円
2	飯田橋グラン・ブルーム	1,389億円
3	六本木ヒルズ森タワー	1,154億円
4	汐留ビルディング	1,069億円
5	東京汐留ビルディング	825億円

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