１．REIT全体市況

2月末の東証REIT指数（配当なし）は1,817.36ポイントと、前月比-1.41%の下落。トランプ氏の減税や金融規制緩和表明を背景に上昇したTOPIXとは対照的な推移となった。
月前半はトランプ氏による日銀の金融政策批判や日銀の国債買入れ姿勢を懸念し、長期金利が1年ぶりに0.1%を上回ったことを受け、東証REIT指数は下落し、14日終値は2ヶ月ぶりに1,800ポイントを割り込んだ。月後半は長期金利が下落に転じると、東証REIT指数は6営業日連続上昇したが、米国の利上げ観測による長期金利の上昇圧力を背景に、慎重な値動きとなった。
月間ベースでは2017年に入り2ヶ月連続の下落となり、足元の長期金利に敏感に反応する不安定な値動きが続く。更に3月は米国の利上げがほぼ確実視されており、日米の長期金利差から、東証REIT指数は一時的に軟調に推移すると考えられる。但し、REITの堅調な業績が支えとなり、分配金利回り3%台後半を目処に、東証REIT指数も下げ止まることを期待する。
2月における日銀の買入れ額は計60億円。買入れ枠の月間平均の目安となる75億円を下回る状態が続き、日銀の消極的な姿勢も東証REIT指数に影響していると見られる。

用途別に見ると、収益の安定性の高いレジデンス系銘柄が底堅く、オフィスビル系や商業・物流施設系銘柄が軟調な中で存在感を示す。銘柄別では、大江戸温泉リート投資法人が前月比+5.9%上昇となり、他のホテル系銘柄の下落基調とは対照的に推移する。昨年8月上場来投資口価格が低迷していたが、第1期決算が終了し実績が示されたことや、スポンサーの大江戸温泉物語との定期賃貸借契約による収益の安定性を背景に、投資口価格の割安感が見直されている。
一方、インヴィンシブル投資法人、日本リテールファンド投資法人、MCUBS MidCIty投資法人、ヒューリックリート投資法人等、分配金権利落ちの影響を受けた2月決算銘柄や増資を発表した銘柄の下落率が大きかった。

個別銘柄の動向では、7日、森トラスト・ホテルリート投資法人が上場した。初値は145,000円と、IPO売出価格である143,000円を1.4%上回ったものの、投資法人が当初想定していた158,000円を8.2%下回った。
既存銘柄では、イオンリート投資法人、オリックス不動産投資法人、MCUBS MidCity投資法人、インヴィンシブル投資法人、日本リテールファンド投資法人の5銘柄が公募増資を発表。投資口市況の調整局面でもREITの増資が相次ぐ背景には、不動産市況や金融環境の先行き不透明感が深まる中、低金利かつ投資口価格が高い時期により好条件で増資を行い外部成長を早期に実現したいREITの意向と、不動産価格の高い時期に保有物件をより好条件でREITに売却したいスポンサーの意向が一致する。
また、REITの投資対象を拡大する動きが続いている。ケネディクス・レジデンシャル投資法人は、運用資産が1,500億円と一定の規模に達しポートフォリオが安定したことから、サービスアパートメントやホテル等の運営型資産へ投資を拡大する。東急リアル・エステート投資法人は、従来のオフィスビル・商業施設だけでなく、オフィス・商業施設を主体としながらホテル・住宅を含む複合型施設に投資を拡大する（ともに投資主総会の承認を条件に変更予定）。不動産価格が高く取得が難しい環境で、取得機会を拡充するとともに、ポートフォリオの収益の安定性や、ホテルの収益成長性を期待する。但し、運営型資産は、運営者に収益が依存する形になるため、運営による良否が出やすい難しさが指摘できよう。
投資法人の決算動向を見ると、好調なオフィス市況を受け、稼働率の上昇や賃料増額改定が一段と進捗する。また金利コストの低下、借入期間の長期化、返済期限の分散化によって財務の安定も強まっており、外部成長を織り込まず、内部成長及び財務の運用だけで増配も期待できる。但し、2018年以降のオフィスビル大量供給を見据え、稼働率及び賃料改定も緩やかな動きに調整され、増配基調が継続するも増加率は低下することが想定されよう。

＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2015年3月～2017年2月の24ヶ月間） 




2．個別銘柄データ

予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※利益超過分配金は分配金に含めて算出する