１．REIT全体市況

7月の東証REIT指数（配当なし）は、前月比+1.39%と、月間ベースで3ヶ月ぶりの上昇となった。
6月の英国のEU離脱決定後いち早く回復した東証REIT指数は、TOPIXとは対照的に、1,830～1,880ポイントの狭いレンジで安定した値動きとなった。但し、28日は日銀の追加緩和期待から前日比+29.94ポイントの大幅上昇となるも、29日にREITの買入枠の現状維持が決定すると、一転して下落相場となり、月末はやや値動きの荒い展開となった。
全体的には安定しているが、用途別に見ると傾向が異なる。レジデンス系銘柄の投資口価格は堅調に推移する。景気の先行きに不透明感が強まるなか、ポートフォリオが分散し収益安定性の高い点が底堅い要因と見られる。
相対的に、景気感応度の高いホテルやオフィスビル系銘柄の回復が遅れている。特に昨年11月上場以来右肩上がりであったいちごホテルリート投資法人が、6月以降大幅下落に転じている。変動賃料割合が43%と高いため、ホテル市況の影響を受けやすい点に加え、大型増資を発表したことも投資口価格の下落に拍車を掛けた。
東証が公表する投資部門別売買動向によれば、7月は海外投資家、国内個人投資家の売越しを、国内金融機関及び投資信託が買い支えた。売買シェア45%を占める海外投資家が5月以来3ヶ月連続の売越しとなっており、投資口価格の上値を抑える要因となっている。一方、投資信託が前月の2倍強の買越額となり、存在感を示す。
7月の日銀の買入れ額は計4回の48億円と、買入れ頻度が減少傾向にある。

個別銘柄の動きでは、7月から9月に掛けて新規上場が相次ぐ。マリモ地方創生リート投資法人が29日上場した。8月には三井不動産ロジスティクスパーク投資法人、大江戸温泉リート投資法人、9月はさくら総合リート投資法人と、それぞれ投資対象や上場背景が異なるが、既存銘柄との差別化をどう打ち出すか、また上場後の外部成長に向けたスポンサーのサポート体制等が重要となろう。
既存銘柄では、ジャパン・ホテル・リート投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人（SRI）、大和証券オフィス投資法人、いちごホテルリート投資法人（IHR）の4件の公募増資が発表された。なかでも2015年に上場したSRIとIHRは、上場後初の増資によって、資産規模をSRIが従来の66％増の515億円、IHRが133％増の476億円と一気に拡大する。
内部成長では、オフィスビルの賃料増額件数が増え増額改定が堅調に推移するが、増額率は前期よりやや低下する事例もあり、これまでの勢いにやや落ち着きが表れている。但し、三鬼商事が公表する東京ビジネス地区の平均空室率は3％台まで低下しており、需給は一段と逼迫している点から、引き続き緩やかな賃料上昇が期待されよう。
一方、ホテルや物流施設は、稼働率の低下等、供給過剰感が出ており、これまで好調であった市況に変調の兆しが出ている点が指摘できる。

＜市況データ＞

＜東証REIT指数と予想分配金利回りの推移＞　　（グラフは2014年8月～2016年7月の24ヶ月間） 





2．個別銘柄データ
 

 
予想利回り算出方法：年換算予想分配金（当期予想分配金＋次期予想分配金）／投資口価格

但し、 決算期が年1回の銘柄：　年換算予想分配金（当期予想分配金）／投資口価格

※予想分配金が未発表の場合、直近期の予想分配金を使用する 

※実質運用日数が変則期間の場合、年換算に修正する 

※GLP投資法人（3281）、日本プロロジスリート投資法人（3283）、日本ヘルスケア投資法人（3308）、インヴィンシブル投資法人（8963）、サムティ・レジデンシャル投資法人（3459）、ケネディクス商業リート投資法人（3453）、野村不動産マスターファンド投資法人（3462）、ラサールロジポート投資法人（3466）、マリモ地方創生リート投資法人（3470）は、利益超過分配金を分配金に含めて算出する