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マーケットコラム

上場来最高の分配金水準のジャパン・ホテル・リート投資法人/アイビー総研 関 大介

2025-02-28

関 大介

1. 分配金は上場来最高額をさらに更新へ

ホテル特化型のジャパン・ホテル・リート投資法人(JHR)は、2月25日に2024年12月期決算実績及び2025年12月期業績予想を公表した。なお、JHRはJ-REIT市場で唯一年1回決算の銘柄となっている。
JHRの2024年12月期決算は1口当たり実績分配金が3,937円となり、上場来最高額の2018年12月期3,890円を更新した。また2025年12月期の予想分配金は4,461円と更新する見込みとなっている(図表)。
増配理由は、ホテル収益などで変動する賃料が増加しているためだ。賃貸収入に占める変動賃料の割合は、2024年12月期に50.2%と初めて50%を超え、2025年12月期は51.1%まで上昇する予想となっている。主な要因は、2025年12月期のRevPAR(※)が前期比で8.9%増加する予想をしていることだ。

※ホテル客室の収益性を示す指標。客室単価×稼働率で算出する。


2. 価格低迷の理由

業績は堅調なJHRであるが、価格は低迷している。2025年12月期の業績予想は、1月24日に公表済で2月25日の決算発表でも据え置かれた。その時点での2024年12月期予想分配金は3,890円であったため、2025年12月期は15%近い増配予想を公表済であった。しかし価格は2月26日時点で1月との変動はなく、分配金が増加し価格が上昇していないため、分配金利回りは6.3%(2月26日時点)と高い状態になっている。

価格低迷の理由は、ホテル系銘柄全体が軟調に推移していることに加え、投資家がJHRの増資を懸念していたためだと考えられる。上記の通り、JHRは1月24日に2025年12月期業績予想を公表しているが、JHRの旗艦物件となる「ヒルトン福岡シーホーク」の取得(644億円弱)を行ったためだ。
この物件取得は増資ではなく借入金で資金調達を行なうとしたため、JHRの総資産の対する借入金比率は2024年12期末の41.1%から47.9%まで上昇する。借入金比率が大幅に上昇することが明確になっていたため、投資家は増資で借入金比率の低下を図ると想定していた可能性が高い。
JHRは決算公表に併せて行った決算説明会で、今後は保有物件の含み益を反映した時価借入金比率を目安に運用を行っていくとしている。含み益率が36%もあるため、簿価ベースでの借入金比率に拘らないという方針だ。また現状の価格では増資が難しいとの認識も示しており、優良物件取得の場合には物件入替えも行なう可能性を示している。


3. 投資ポイントと注意点

まず先に注意点を挙げると、JHRは他のJ-REITとは大幅に異なる点があることを認識しておく必要がある点だ。J-REITは「安定的な賃貸収益を基に投資家に分配する仕組み」が特徴であるが、JHRは変動賃料の比率が極めて高くなっている。
さらに前述の図表の通り、2020年12月期から2022年12月期まで大幅な減配となった要因は、変動賃料が生じなくなっただけではなく、スポンサー運営のホテルに対し固定賃料も減免したためだ。ホテル系銘柄は、星野リゾート・リート投資法人(3287)除き、他のホテル系銘柄も同様に減免を行っている。従ってホテル系銘柄に関しては、大幅な減配が一定期間継続するという他のオフィス系等のJ-REITとは異なるという点を考慮して投資する必要がある。

一方でJHRの利回りは市場平均が5%程度となっている中でも6%を超えており、投資妙味が高い水準となっている。さらに2025年12月期の業績予想には物件売却益が含まれているが、その点などを除外した巡航ベースの分配金は4,295円と銘柄側は示している。従って巡航ベースでも利回りは6.1%(26日終値70,200円)と高い水準だ。
また2024年に取得した「沖縄ハーバービューホテル」(取得額215億円)は、全館改装が2025年11月に完了する。従ってこの物件の収益寄与は2026年12月期以降となるため、巡航分配金水準のさらなる上昇も見込まれる。つまり増配に注目する投資家で、インバウンド(訪日客)の増加基調が続くと判断するならば、JHRは投資先として魅力的な銘柄と考えられる。


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