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マーケットコラム

NTT都市開発リート投資法人に対する株式公開買い付けについて/アイビー総研 関 大介

2025-02-03

関 大介

1. 純投資としての株式公開買い付け

2025年1月28日にシンガポール系投資ファンドである3Dインベストメントパートナーズは傘下のファンド(3DIP)を通じて、NTT都市開発リート投資法人(NUD)に対し、投資口の公開買い付け開始を公表した(※1)。
なお、公開買い付けは一般的に「TOB」を別称されるが、後述の通り経営権の取得などを目的としていないため、この取引に関しては以下、「本買付け」とする。

3DIPは、2024年10月から11月にかけてNUDの投資口2.19%(32,420口)を純投資目的で取得した。本買付けにおいても、重要提案行為や役員の選任を通じてNUDの経営権を握り、支配することを目的としていません。その点を明確に示すために、既に取得済の投資口と併せてNUDの投資口は15%を上限としている。
買付け額は131,890円、期間は1月28日から3月3日までとなっている。買付け下限はNUD投資口の10%相当となる115,279口、上限は15%相当となる189,128口と設定し、下限に満たない場合には本買付けのすべてを行わない。


2. 本買付けの背景と効果

3DIPは、本買付けの背景として、NUDの価格が割安で推移している点を挙げている。また買付けという手法の理由として、単純な市場取引では時間を要することや、NUD投資口の流動性と比較した場合、3DIPの市場での取得が価格に与える影響を述べている。
前述の通り、3DIPは純投資目的としているが、NUDの保有物件売却時にスポンサー及びそのグループ会社に対して優先的に購入機会を提供することが多いという点をNUDの課題としており、この点に関して3DIPは見解を伝えることを想定している。

本買付けの公表により、NUDの価格は大幅に上昇した。公表日(1月28日)の終値は、前日比8%以上高い133,500円となり、昨年来高値を更新し2023年10月以来となる13万円台に回復した。1月28日以降買付け価格を上回る価格推移となっており、この状態が続けば本買付けが成立しない可能性も生じている。
また、J-REIT市場全体の価格に対しても波及効果があり、東証REIT指数は2024年10月以来となる1,700ポイント台を28日に回復した。3DIPはNUDの価格や業績などを考慮し割安としているが、他銘柄も同様の状況であり、他の機関投資家のJ-REIT投資への材料となったと考えられる。


3. 投資口の公開買い付けには市場の緊張感を高める効果も

3DIPは本買付けに275億円の資金を拠出する予定としている。サッポロホールディングス(2501)の筆頭株主という点も含め、時価総額2000億円を下回るNUDの過半数を目指す資金力もあると考えられる。今後更に買い増しする場合には、更に価格が上昇する可能性もあり、現時点では3DIPの目的は買付書に記載されている通り、純投資となるだろう。

一方で、外資大手ファンドがJ-REIT価格の割安感に注目し、投資口の公開買付けを実施したことは、他銘柄の緊張感を増す効果が期待できそうだ。3DIPはNUDの価格がNAV(※2)に対し82%程度で推移している点を割安感の根拠としている。
J-REIT価格は反発しているが、29日時点で22銘柄のNAVが80%以下となっている。例えばNUDと同様に関東圏でポートフォリオを構築し、オフィスを主体としている東急リアル・エステート投資法人(8957)の価格はNAVに対して80%程度だ。
NAVで見ると割安感が残る銘柄も多く、外資系ファンドが純投資ではなくTOBを仕掛ける余地がある状態だ。このような動きに対抗するためには、スポンサーが傘下の銘柄の投資口を大幅に取得するか、合併などによって時価総額を大きくする必要がありそうだ。



※1:本稿は特段の記載なき場合、「公開買付届出書」2025年1月28日に拠る。
※2:Net Asset Valueの略。REITの場合、不動産価格を簿価ではなく不動産鑑定価格をベースにした資本(出資)価値を示す。


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