2018-11-22
1.価格上昇銘柄はオフィス系銘柄が牽引
J-REIT価格が上昇基調を強めている。東証REIT指数は昨年末の1,662ポイントから11月19日には1,796ポイントまで8%を超える上昇を示している。
終値ベースで1,800ポイントを超えれば2017年3月以来、1年8ヶ月ぶりとなる。
2017年4月以降のJ-REIT価格下落は毎月分配型投資信託からの資金流出が主要因であったため、価格面ではその悪影響を解消した形になっている。
2018年の価格動向で最も顕著な傾向は、オフィス系銘柄の価格上昇が目立つ点である。第3四半期末となる9月末時点で見ると、2017年末比で価格上昇率が大きい上位10銘柄のうち8銘柄がオフィス系またはオフィスを主体とした総合型銘柄になっている。
オフィス系以外で価格が上昇した2銘柄は、大幅な物件売却益が価格上昇に影響している。従って実質的にはオフィス系銘柄への投資家評価が高くなっていることがうかがえる。
代表的な銘柄としては、日本ビルファンド投資法人(NBF)が挙げられる。NBFの価格は2017年末に551,000円であったが、11月21日には684,000円まで24%を超える上昇を示した。分配金利回りも価格上昇に伴い2017年5月以来となる3%以下の水準になっている。
2. 好調すぎるオフィス賃貸市場と分配金への影響
投資家がオフィス系銘柄への選別を強める背景には、賃貸市場が極めて好調に推移していることがある。
オフィス系銘柄は東京都心部を中心に投資を行っているが、三鬼商事の調べによれば10月末時点で東京都心5区の空室率は2.2%まで低下している。
さらに同社の調べによれば、オフィス系銘柄の投資比率が高い名古屋・大阪・福岡は全て空室率が2%台になっているなど、オフィス市場は全国的に過去にない好調な状況となっている。
従って、投資家からはオフィス系銘柄は、保有物件の収益力が上昇し分配金が増加する可能性が高いと見えているため価格が上昇していると考えられる。
しかし、空室率が低すぎることがオフィスビルの収益力上昇の妨げになるという点も、投資家は考慮すべきだと考えられる。
空室率が低いということは、移転を検討する企業にとって選択肢が少ないことを意味する。
つまり移転したくても移転しにくい状況になっているため、現在のオフィスを継続的に利用するという選択肢が有力になってしまう。
オフィスビルの貸し手から見れば、テナントが退去すれば現状の募集賃料単価で新しいテナントの誘致ができるため収益力が増加する。
しかし、テナントが継続利用している状況では、テナントとの賃料単価が募集賃料より低くても募集賃料まで増加させることは難しい。
つまり空室率が低くすぎる状況では、好調な賃貸市場によって上昇している賃料単価の恩恵をオフィスビルの貸し手は受けにくいとも言えるのだ。
このような点から、投資家としては、オフィス系銘柄が賃貸収益によって分配金が大幅に増加するという過度な期待を持って、投資を行うことは避けるべきと考えられる。
前述のNBFのように大幅に価格が上昇している銘柄も多いことを考慮すれば、利益確定も選択肢の1つとして検討しておく必要性がありそうだ。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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