スマートフォン版を表示

マーケットコラム

2017年の価格推移を振り返って/アイビー総研 関 大介

2018-01-12

関 大介

 今回は、昨年2017年のREIT価格の動向について記載します。

1. 2017年の価格動向の特徴

2017年の価格動向は、これまでにない動きを示しました。
具体的には投資家の評価が低く利回りが高い銘柄(以下、高利回り銘柄)の価格が上昇基調を続ける一方で、投資家の評価が高く利回りが低い銘柄(以下、低利回り銘柄)の価格下落が続いたことです。
これまでの高利回り銘柄の価格動向は、低利回り銘柄の価格が上昇し割高感が強くなる中で遅れて上昇していくという傾向がありました。言い換えれば、高利回り銘柄の価格上昇は、J-REIT市場全体の価格が頭打ちになり下落に転じるサインでもあったのです。

しかし2017年は価格上昇率が38%を超えたマリモ地方創生リート投資法人(証券コード3470)の分配金利回りが2017年末時点でも6%を超えているなど、高利回り銘柄の価格上昇が顕著な年となりました。
昨年来の比較が可能な2016年末時点上場銘柄57銘柄のうち、価格上昇率上位10銘柄は全て分配金利回りが2017年末の平均4.57%を超えています。
一方で価格下落率が高かった10銘柄は、全て平均より低い利回りとなっています(図表1)。


2. 2017年の価格推移の背景

このような特異な価格形成になった要因は、安定的な買い主体であった投資信託からの資金流出が続いているためだと考えられます。
投資信託は、東証REIT指数に連動しないアクティブ型であっても、時価総額が高く利回りが低い銘柄を組入れ上位銘柄としています。従って投資信託の解約が続けば、売却額は低利回り銘柄の方が大きくなります。

さらに個人投資家の一部が低迷する投資信託の運用実績を受けて解約し、利回りに注目して高利回り銘柄への投資拡大をしたことで、高利回り銘柄の価格が上昇したものと考えられます。
本来、J-REITは高い利回りを背景にして長期投資を行う個人投資家層の拡大を図るという目的がありました。
その点では高利回り銘柄への投資拡大を通じて個人投資家が増加することは歓迎すべき動きです。
但し、高利回り銘柄への投資を行った個人投資家が長期投資を視野に入れているかは現時点では明確になっていません。この点には、今後も各銘柄の個人投資家数を検証していきたいと考えています。


3. 高利回り銘柄への投資の留意点

また、長期投資を視野に高利回り銘柄に投資を行っている投資家は留意すべき点があります。
それは高利回り銘柄は、借入金の調達期間が短く変動金利で支払い利息を抑制している銘柄が多い点です。
利回りに注目して投資しても、今後長期金利が上昇した場合には支払利息の増加というかたちで分配金が減少する可能性が高いため、投資した金額に対する利回りが低下することになります。
さらに高利回り銘柄は前述した通り価格は上昇しましたが、市場平均の利回り以上で推移しています。従って増資を行った場合に、増資前の1口当たり出資額を下回る増資価格になり1口当たり分配金の希薄化(減少)が起きる可能性が高いことにも注意が必要です。

マーケットコラム バックナンバー
2024/11/15
トランプ大統領の再選がJ-REIT市場に与える影響/アイビー総研 関 大介 【関 大介】  
2024/11/01
「売られすぎ」のJ-REIT価格/アイビー総研 関 大介 【関 大介】  
2024/10/15
2024年度上半期の価格動向/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
2024/09/27
米国の利下げとJ-REIT価格への影響/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
2024/09/13
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人の合併について(2)/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
  • PR

  • PR

決算発表動画
物件取得価格ランキング
1 新宿三井ビルディング 1,700億円
2 飯田橋グラン・ブルーム 1,389億円
3 六本木ヒルズ森タワー 1,154億円
4 汐留ビルディング 1,069億円
5 東京汐留ビルディング 825億円
株価値上り率ランキング
1 ジャパンリアル +3.47%
2 日本プロロジス +2.98%
3 オリックス不動産 +1.70%
* 当サイトはJ-REIT(不動産投資信託)の情報提供を目的としており、投資勧誘を目的としておりません。
* 当サイトの情報には万全を期しておりますがその内容を保証するものではなくまた予告なしに内容が変わる(変更・削除)することがあります。
* 当サイトの情報については、利用者の責任の下に行うこととし、当社はこれに係わる一切の責任を負うものではありません。
* 当サイトに記載されている情報の著作権は当社に帰属します。当該情報の無断での使用(転用・複製等)を禁じます。