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マーケットコラム

ヘルスケアREIT投資の注意点/アイビー総研 関 大介

2015-12-29

関 大介

2015年最後のコラムとなりますので、2015年のJ-REIT市場で最も存在感が増したヘルスケアREITについて記載します。


1. ヘルスケア施設特化型REITの現状


現在ヘルスケアに特化して投資を行う銘柄は3銘柄あります。
上場時期順に記載すると次のとおりです。
2014年11月に、日本ヘルスケア投資法人(証券コード3308、以下NHR)
2015年3月に、ヘルスケア&メディカル投資法人(証券コード3455、以下HCM)
2015年7月に、ジャパン・シニアリビング投資法人(証券コード3460、以下JSL)

それぞれの利回りは12月16日終値時点で、
NHRが4.56%
HCMが4.26%
JSLが3.63%
となっています。
JSLの利回りが最も低く(価格が高い)なっていますが、決算期が変則であり分配金が少ない上場期(2016年2月期)が含まれているためです。
通常の6か月決算となる2016年8月期の分配金3,506円をベースに利回りを計算すると、4.7%程度(3,506円×2÷147,400円)となります。
J-REIT市場の平均利回りは、12月16日時点で3.52%となっていますので、ヘルスケア銘柄は全て高い利回り(価格は安い)となっています。
その要因としてヘルスケア銘柄が抱える用途としてのリスクと不動産価格の高騰があるものと考えられます。



2. ヘルスケアREIT特有のリスクとは?

前述したヘルスケア特化3銘柄は、まだ病院などに組入れを行っていませんので、実際はシニア住宅特化型銘柄となっています。
シニア住宅は、人口減少の日本において数少ない需要が高くなる用途であるというメリットがありますが、介護保険の制度変更に影響を受けやすいことや実際にサービスを提供する運営事業者がテナントになっているというデメリットがあります。
特に運営事業者がテナントとなっていることのデメリットとして、運営方法次第で賃料が大幅に減額となる可能性があることが挙げられます。
具体的には、運営事業者が雇用する従業員が事件などの不祥事を起こす可能性がある点です。
先日、神奈川県にあるシニア住宅で従業員による入居者に対する暴力行為があり介護保険の適用を停止させる事例がありました。
このような事例が発生すれば、賃料が大幅に減少する可能性が高くなるのです。
暴力行為自体を是認するものではありませんが、介護職員の低賃金や人員不足などシニア住宅運営に関しては制度として改善が必要な点が多いため、運営リスクが非常に高い用途と考えられます。


3. ヘルスケア施設の投資市場

しかし、J-REITの銘柄が3銘柄に増加し物件取得意欲が旺盛となっているため、シニア住宅の売買価格は高騰しています。
例えばNHRが10月末に公表した増資に伴い取得する物件は、岡山市2棟、高松市2棟の全4棟ともに不動産鑑定の還元利回りが5%を切る事例になっています。
他の用途であれば6%近い利回りとなる地域ですので、シニア住宅ということで20%以上不動産価格が高くなっていることになります。
不動産鑑定は現状を所与のものとして評価していますので、将来的な介護職員の給与引き上げや職員増加に伴う運営事業者の収支悪化や前述のような事件が発生するリスクを織り込んでいません。
さらにシニア住宅以外の用途に共通することですが、現状の異次元金融緩和による低金利が鑑定評価額の高騰(還元利回りが低くなる)に影響を与えています。
筆者は、他用途と比較して運営リスクが高いシニア住宅が不動産鑑定において低い利回りで評価されている現状では、物件取得を行うことはその銘柄が鑑定評価額の下落など将来的なリスク拡大に繋がると考えています。
従って、ヘルスケア銘柄は利回りが高くなっていますが慎重な投資判断が必要な状況と言えるでしょう。
唯一価格が反転するとすれば、日銀による第3弾の金融緩和が実施された時と考えられます。

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