2015-09-17
今回と次回は、野村不動産系3銘柄合併による投資家のメリット・デメリットについて記載します。
1. 野村不動産3銘柄の合併成立
3銘柄とは、具体的には野村不動産が100%出資する資産運用会社が全て運用を行っているオフィス投資の野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959、以下NOF)、賃貸住宅投資の野村不動産レジデンシャル投資法人(証券コード3240、以下NRF)、物流施設・商業施設投資の野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3285、以下NMF)のことです。
3銘柄ともに7月に行った投資主総会により合併が承認されましたので、10月に新設合併し、野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3462、以下「新NMF」)として新たなスタートを切ることになります。
この合併は、J-REIT市場で初めてとなる「のれん」が発生するものとなっています。
2. 新・「野村不動産マスターファンド投資法人」とは
新NMFは、合併により物件取得額が7,800億円弱、出資総額(株式会社の資本金に相当)が4,450億円強(※1)となります。
また合併後にオフィス3棟、賃貸住宅2棟、商業施設2棟の合計7棟を231億円で取得する予定となっていますので、物件取得額は8,000億円を超える規模となります。
物件取得額が8,000億円を超える銘柄は現時点では3銘柄しかなく、第4位のユナイテッド・アーバン投資法人(証券コード8960)の取得額は5,300億円強ですので、新NMFは業界を代表する大規模となります。
3. 合併による2つのメリットとは?
このような規模の大幅拡大が投資家にとっての最大メリットと考えられます。投資家にとって規模拡大のメリットは2点あります。
まず1点目として、大規模物件の取得が可能となることです。
例えば1棟で500億円規模の物件取得をした場合、合併前の3銘柄ではポートフォリオに占める割合が高くなりすぎることや、その物件の取得利回りによって分配金が変動する可能性が高くなります。
資産規模が8,000億円を超える新NMFであれば500億円の物件でもポートフォリオに占める割合が10%以下となりますので、分配金への影響の相対的には低くなります。
2点目のメリットとして、出資額が4,500億円規模まで増大しますので、継続的な規模拡大が可能となることです。
例えば500億円の物件取得に併せて300億円規模の増資を行った場合、新NMFでは出資額は7%弱(300億円÷4,500億円)しか増加しません。
従って、投資口価格が低迷している時期に1口当たり出資額を下回るディスカウント増資を行っても分配金への影響を少なくすることが可能となるのです。
J-REIT市場の履歴とみると、J-REIT価格の低迷は、賃貸や売買価格などの不動産市況が悪化している時期と重なる場合が多くなっています。
一方で、そのような時期は、売買価格の低下に伴い高い利回りで不動産の取得が可能な時期でもあります。
規模の小さい銘柄はディスカウント増資を行ないにくい状況となりますので、競合が少ない状態で新NMFは安定的に物件取得が可能となると考えられます。
一方で、新NMFはデメリットも存在しますが、その点については次回改めて記載します。
※1:NMF価格(「合併説明会資料」2015年5月27日のもととなる5月26日終値)をもとに筆者が算出した数値。なお端数投資口の売却による減少などを見込んでいない単純計算値。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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