2015-06-04
今回は、5月27日に公表された野村不動産系のREIT3銘柄の合併について記載します。
1. 合併の概略
野村不動産ホールディングス <3231> が100%出資する野村不動産投資顧問が運用を行っている、オフィス投資の野村不動産オフィスファンド投資法人(NOF)<8959> 、賃貸住宅投資の野村不動産レジデンシャル投資法人(NRF)<3240> 、物流施設・商業施設投資の野村不動産マスターファンド投資法人(旧NMF)<3285> の3銘柄が、各銘柄の投資主総会の承認を条件に新設合併し、10月に総合型銘柄として新たなスタートを切ることになります。
新設投資法人の名称は、野村不動産マスターファンド投資法人(証券コードは新たに付与)、決算期は旧NMFと同様の2月/8月決算となります。
合併比率はNMF1:NOF3.6:NRF4.45となっていますので、例えば合併前にNOFの投資口1口を保有していれば、合併後は新NMFの投資口3.6口が投資家に割当てられる(※)ことになります。
2. 正ののれんについて
この合併は3銘柄での合併ということだけでなく「正ののれん」が生じる初めての事例となります。
正ののれんは、昨年度まではJ-REIT合併の障害となっていました。正ののれんは、無形固定資産として資産勘定に計上され、その償却を会計上では20年間で行うことになります。つまり正ののれんを計上すると、のれん償却費として費用が増加します。
一方で、のれん償却費は昨年度までは税務上は費用と認められていませんでした。つまり正ののれんを計上すると税務上と会計上の利益が異なるという税会不一致が生じます。
一般の事業会社の場合には税会不一致は通常発生し、法人税等調整額で処理しますが、利益の90%以上を分配することで実質的に法人税が課税されないJ-REITにとっては大きな障害となるのです。
しかし、平成27年度の税制改正によって、J-REITではのれん償却費を投資家に分配することで税法上も費用とすることが可能となりました。つまり今回の合併はこの税制改正があったことで実現したと言えます。
3. 合併による効果は?
合併のメリットは、3銘柄が開示した「合併説明会資料」(5月27日付)によると、運用の柔軟性が増すことにあると考えているようです。合併資料では個別の3銘柄で運用するより、合併し総合型となることで、収益の安定性と成長性の両面が追求できることや、3銘柄が投資対象としていないホテルや工場など投資用途の多角化が可能となり投資機会が拡大するとしています。従って新NMFは、物件取得による外部成長を加速していくものと考えられます。
4. 新投資法人の分配金水準は?
新NMFの1口当たり予想分配金は、通常の6か月決算となる第2期(2016年8月期)に2,710円となっています。合併資料のP.4では、この分配金水準は、合併前の3銘柄のそれぞれの分配金を上回るものになるとしています。
但し、新NMFは前述の通り「のれん償却費」を利益超過分配することを前提とし、第2期では1口当たり537円が含まれていることには留意が必要です。
この合併の背景や投資家のメリット・デメリットについては改めて取り上げたいと考えています。
なお、前述の通り、この合併は投資主総会で2/3以上の賛成が必要な特別決議事項となります。投資主総会までにこの合併に反対する提案などがない場合は、議決権を行使しない場合には「賛成」となるみなし賛成制度が適用されますので、投資主はご注意ください。
※ 1口未満の投資口は、市場で売却されその売却代金が投資家に交付されることになりますので、実際には3口と0.6口分の売却代金の交付となります。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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