2016-04-15
東証が公表した3月のREITの投資家部門別売買動向を見ると、日銀がマイナス金利を発表した1月以前とは異なる様相を示しています。
今回は大きく異なった点とその影響について記載します。
1. 3月の投資部門別売買動向の特徴は?
3月の部門別差引き売買統計を見ると、外国人投資家と投資信託の差引き売買額は、マイナス金利導入前とは異なるものとなっています。
まず外国人投資家は、前回のコラムで記載した通り、日銀が金融緩和策を打ち出すと単月では大幅な買越しとなるものの、その傾向が続くことはありませんでした。
しかし、3月に832億円と、2月の1,167億円に続き大幅な買越しとなりました。
2月の買越し額は2007年2月に次ぐ過去2番目となりましたが、3月の買越し額は過去3番目となる金額です。
外国人投資家は、2ヶ月連続の大幅買越しというマイナス金利導入前とは全く異なる投資を行ったことになります。
次に投資信託は、マイナス金利導入前は主要な買越し主体となっていました。
具体的には、図表の通り、2013年と2015年には最大の買越し主体となっています。
ところが2月は過去最大となる583億円、3月に2番目となる485億円の売越しに転じています。
投資信託は、マイナス金利導入前は価格が大幅に上昇した時などには売越しとなる月もありましたが、100億円を超える売越しを2ヶ月連続で行ったことはありません。
また、このような投資信託の大幅売越しが続くことは、2003年4月に統計が公表されてから初めてとなります。
2. なぜ投資家の動きが変化したのか?
このように投資家の売買動向が変化した要因は、日銀の金融緩和策が円安に結びつかなくなったことが背景にあると考えらます。
外国人投資家から見れば、J-REIT投資を行う上で障害となっていた円安による為替差損の懸念が少なくなっています。
さらに日本の上場株式とは異なり、J-REITの1口当たり分配金の動向を見れば、業績懸念が少なく、マイナス金利の拡大が実施されれば業績の更なる改善や価格上昇の可能性が高いということで、投資が拡大している可能性があります。
一方で、投資信託は為替が円高に転じたことで株式市場の低迷が長引くと見ているため、大幅な売越しに転じたものと考えられます。
投資信託の総売買金額は2月と3月の月平均が2,300億円に達し、2015年の平均値1,335億円に対して大幅に増加していますので、買い手がいなくなったという状況ではありません。
しかし、投資信託は実質的には個人投資家の資金の流れとも言えます。
日経平均株価が2014年10月の日銀による第二弾金融緩和前の水準まで下落し、当面の改善が見込めなくなったため、投資信託を通じて流れ込んでいた個人の資金は利益確定の売越しという影響が出ている可能性があります。
3. 投資家動向の変化による影響は?
主要投資家の動向が変化した影響は、今後J-REIT価格の下落局面に表れるでしょう。
これまで筆者は、当面のJ-REIT価格は株式市場の混乱によって一時的な下落があっても回復を示すという見通しを持っていました。
しかし主要な買い手であった投資信託の動向が不透明になったことで、価格の下落幅が大きくなるだけでなく、反転するまでに時間を要するリスクが高くなったと考えています。
なお、金融機関(日銀を除く)は、マイナス金利導入後の2月、3月にそれぞれ205億円、106億円の売越し(日銀の買入れ額控除後)となっています。
この時期は金融機関の決算期前であり、株式市場が不安定な時期ともなっていたので、J-REITへの利益確定の動きは自然なものと言えるでしょう。
但し、4月以降も売越しが続くようであれば、J-REIT市場は外国人投資家頼みの市場に変貌したことになります。
このような点から、東証が公表する部門別売買動向には、注意を払う必要がありそうです。
※J-REITの部門別売買動向は毎月第8営業日の午後3時に下記URLに公表されます。
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/03.html
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
---|---|---|
2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
1 | サムティ・レジ | +2.62% |
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2 | ヘルスケア&メディカル | +1.69% |
3 | 東海道リート | +1.60% |
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