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マーケットコラム

FCレジデンシャル投資法人といちご不動産投資法人の合併/REITアナリスト 山崎成人

2011-08-19

REITアナリスト 山崎成人

 8月8日にFCレジデンシャル投資法人(FC)といちご不動産投資法人(いちご、旧クリードオフィス投資法人)の合併が発表されました。(合併予定日は11月1日)
FCはレジテンス系REITで、いちごは中小オフィスビル系REITですから、合併によりセクター分散が図れます。また、FCの資産規模は234億円(取得価格ベース)で、いちごが1,138億円ですから、合併後は単純合計で1,400億円弱の規模になります。尤も、合併後に保有資産の売却も行うでしょうし、合併による資産圧縮もありますので、1,000億円程度の規模になるのではないかと予想されます。
FCは上場来資産規模が増えていませんから、この合併によって1,000億円程度まで増加するのは一番のメリットですが、いちごの保有資産で資産規模を拡大するのがどの程度投資主価値に寄与するのかは不明です。発表では、いちご保有の中小オフィスビルは、オフィスビル市場の上昇局面で寄与するとしていますが、他律的な要素期待が弱いところです。
存続投資法人はFCになっていて、合併による調整によって1口→7口に分割されますから、基準価格で見ると500,000円が71,428円になります。8/18のFCの投資口価格が222,100円ですから、合併後に32,000円以上になれば一応成功と言えるかも知れません。

数字的な概要は以上の通りですが、問題は、投資セクターが増える事で資産運用の負荷が大きくなること、比較的収益ボラティリティの高いいちごのオフィスビルをどう処理するのかという点が不透明です。
合併による簿価圧縮によって、NOI利回りは上昇しますから、そのまま保有を続けられれば、未だ良いですが、売却によって負ののれん代を費消してしまうと、投資主にとってはメリットが小さくなってしまいます。
このように考えると、本件合併の行く末は不透明ですので、合併までの3ヶ月で明確な方針と戦略を提示して市場にアピールしなければなりません。
また合併後も諸々の問題を抱えると思いますから、単純に期待する訳にはいきませんが、お互い現在の状態では存続の危機を迎える可能性が高かったですから、その点では一歩前進だと言えます。

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