2007-10-19
8月31日のコラムで「サブプライムローン問題とJREIT」と題して取り上げ、それから1ヶ月半が経ちましたが、依然としてこの問題の火種は消えていません。
新聞等マスメディアでは、世界の金融市場の信用収縮や、米国の景気後退と関連付けて報道する記事が多くなっていますが、この問題の本質は不動産価格の下落(循環変動)にあります。
即ち、至極当たり前の事実である、「上昇した価格は何れ下降に転じる」という事が、投資判断の際にどの程度斟酌されていたのかという事によって、リスクの大小が決まります。
然しながら、今回の問題によって、米国も欧州もそして日本も、それぞれの投資市場が不動産のリスクを充分に把握出来ないという弱点を露呈したものだとも言えます。
欧米では投資判断の際に格付けが参考となりますので、サブプライムローン債券を組み込んだ証券化商品の格付けに疑問の声も上がっていますが、格付機関であっても不動産リスクを充分に把握出来ない事を物語っているとも言えます。
こうなると、不動産リスクをどう読めば良いのかに迷いが生じ、投資家の判断は保守的、且つ、マイナス思考に振れますから、米国REITを始めとした世界のREITに対する投資判断の姿勢が慎重になります。
こう考えると、仮にサブプライムローン問題が収束したとしても、JREITも含めた世界のREITの調整は今後も続くと予想されますが、中長期的に見れば、この調整はREITにとっては必要な事だとも言えます。
米国と豪州が主流であったREITが、日本と欧州にも波及し、世界的規模で不動産投資が可能となりつつありますが、このような世界のREIT市場の創設期に不動産リスクが再認識される事は、投資家・銘柄双方にとって必要な事だからです。
このように長期マクロの視点で見れば慌てる必要はないのですが、それでは実際に不動産価格の変動リスクをどのように読めば良いのかという技術的な問題は残っています。
私は、世界の不動産価格のメカニズムを論じる程の知識も経験もありませんが、日本の不動産に限るならば経験則によってある程度は言及出来ます。
即ち、不動産価格の変動を現象的に追うだけであれば、投資という分野では損失の方が大きくなる可能性かあります。
これは過去の不動産事業者の業績推移を見れば分かるように、誰一人、不動産価格の循環変動から逃れられた者は居ないという事実があります。
私自身、大きな不動産価格の循環変動に3回遭遇していますが、3回目(不動産バブル時)の時に、将来の損失回避を主張し、価格上昇を抑える意見を説いて回りましたが、意見は聞いても、実際の価格付けの時には別のメカニズムが働いてしまいました。
このような経験から、不動産価格は比較的小さな循環変動を何度も繰り返すような方向に持っていくしかリスクをコントロールする手段がないと実感しました。
誰もが頂点と思えるような価格まで上昇させないで、その前に調整局面を迎えればリスクは小さくなります。そして、実際にそのような論理的な動きで不動産取得を行う強力な主体が存在すれば、不動産価格の変動によるリスクを緩和出来ると考えました。
私は、それがJREITだと考え、創設期からこの手法に魅力を感じ、この世界に飛び込みました。
30年以上不動産業界に身を置いて果たせなかった事が、JREITが可能とするかもしれないという希望がこの仕事を選択した理由なのです。
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