2018-12-28
1. 12月下旬の急落要因
株式市場急落の「火の粉」は、遂にJ-REIT価格にも降りかかってきた。
11月26日に2017年3月以来となる1,800ポイント台を回復し、12月中旬までは安定していた東証REIT指数は、25日には1,740ポイントまで下落した。特に25日は取引時間中に1,700ポイント近辺まで下落する局面もあり、株式市場と同様に値動きが激しくなっている。
この背景には、外国人投資家が11月に行った大幅な買い越しがあるものと考えられる。前回連載でも記載した通り、外国人投資家の11月における買い越し額が880億円と過去3番目となる大幅なものになった。
11月の大幅な買い越しは、一時的な「逃避先」としてJ-REITが選ばれたためであった可能性が高い。最も買い越しが大きかった2007年2月は、外国人投資家が不動産投資にのめり込んでいた時期であり、東証REIT指数は同年5月末に最高値を付けた。2番目に買い越しが大きかった2016年2月は、前月末に日銀がマイナス金利政策を打ち出した時期であった。
このように過去2回の大幅買い越しはその要因が明確であるが、11月の買い越しは明確な要因が存在していない。従って、12月下旬の下落は逃避資金の一部が流出したことが原因と考えられる。更に投資家が本格的なリスクオフへと移行する予兆とも考えられる。
一方で、25日の東証REIT指数の値動きを見ると、一時的に1,700ポイント近辺まで下落したものの、1,740ポイントまで急速に反発している。また日本ビルファンド投資法人(NBF)など時価総額が大きく2018年に大幅に価格が上昇した銘柄の値動きはしっかりしている。従って投資家が、本格的なリスクオフに移行したという局面には達していないと考えられる。
2.2019年の見通しと投資の注意点
外国人投資家の大幅買い越しで2018年のJ-REIT価格は上昇したかたちになったため、2019年のJ-REIT価格を見通す場合には、上値が重い展開が想定される。
具体的には東証REIT指数で見れば、1,650ポイントから1,750ポイントを中心としたレンジでの動きとなりそうだ。
その理由として、外国人投資家以外のその他の投資部門では、2013年から2015年の価格上昇を牽引してきた金融機関や投資信託は、2018年には過去最大の売り越し主体となっていることが挙げられる。金融機関のJ-REIT投資はこれまでの個別銘柄からJ-REITのETFに移行していると言われている。しかし、大幅な買い越しが続く証券会社の自己取引勘定に含まれていると考えられるため、その動向は判然としない。
また投資信託は、9月に2017年3月以来の買い越しとなったが、10月にはまた売り越しに転じるなど、大幅な売り越し基調からは転じているが、買い越し基調に転じるという明確な動きを示していない。このような点から外国人投資家の動向が変化した場合は下落しやいと考えられる。
更に11月の価格動向を見ると、時価総額の大きい銘柄の価格上昇傾向が強くなっている。顕著な傾向は、時価総額が市場最大のNBFの価格推移で示されている。10月まで65万円程度で推移していたNBFの価格は、11月下旬に2016年4月以来となる70万円台に達した。利回り面で見れば2017年4月頃と同等の2.9%程度となり、2016年4月時点の2.4%程度と比較すれば過熱感はない。だが冒頭に記載した通り、投資信託の売り越しによる影響が及ぶ前の状態に戻っている。
時価総額の大きい銘柄の利回りが低くなっているため、時価総額をベースに算出される東証REIT指数が2019年も2018年と同様に大幅な続伸するとは考えられない。
為替動向に左右されない投資商品としてJ-REIT市場は、投資資金の「退避場所」としての役割を果たしているが、投資家のリスクオフの動きが鮮明になった場合には下落する可能性を視野に入れておく必要がありそうだ。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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