2026年02月27日

「REITキーマンに聞く!」三井物産・イデラパートナーズ株式会社 代表取締役社長 菅沼 通夫氏

今回は、三井物産・イデラパートナーズ株式会社 代表取締役社長 菅沼 通夫氏に業界動向やファンドの特徴に関してインタビュー形式でお話していただきました。

三井物産・イデラパートナーズ株式会社 菅沼 通夫氏

 

――売買市場について、不動産価格やキャップレートの見通しや売買プレイヤーの姿勢の変化等をお聞かせ下さい。

売買市場については、一般的な見解として金利上昇局面においては投資期待利回り(キャップレート)上昇を通じた不動産価格の下落が想定されますが、実際のところ不動産価格の調整が顕在化している様子はなく、むしろ底堅く推移している印象を持っています。その背景として、前述のとおりオフィスやホテルなど、賃料上昇が見込まれるタイプのアセットについてはキャップレートが維持されたまま賃料上昇が織り込まれ、価格が維持または上昇しているという状況にあると考えられます。
このようなマーケット環境の下、国内投資家のみならず海外投資家の投資意欲も引き続き旺盛であり、新たな物件取得が難しい状況は継続しています。不動産投資における利回りスプレッド(運用利回りと資金調達利回りの差)は縮小傾向にありますが、海外と比較すると依然として高い水準を維持していることも、物件価格の維持・向上の要因となっています。一方で、金利等のコストが上昇する中で、賃料上昇が見込みにくい長期固定契約などの形態の物件については、一定の利回りが確保できない場合には投資家から敬遠される傾向にあると感じています。

――総合型REITとしてホテルや商業施設にも投資しています。テナント(オペレーター)の売上状況と今後の見通しをどのようにお考えですか。

ホテル市場は、インバウンド需要拡大が大きな支えとなっています。中国政府による訪日自粛勧告があり、2025年末にかけて中国人観光客は大幅に減少しましたが、中国以外の国からの訪日客数がそれを上回る伸びを示し、訪日外客数は11月前年同月比+10.4%、12月同+3.7%と増加基調を維持しました。稼働率及びADRはいずれも全国的に上昇基調にあり、リサーチ会社であるJLLのオペレーター調査 によると多くのオペレーターが2026年も成長が続くものと見込んでいます。その一方で建築費高騰や人手不足により新規供給の難易度は高まっていることから、需給バランスは当面引き締まった状況が期待されます。人件費やインフレによる物価上昇といった運営コスト増加要因はあるものの、売上成長がそれを吸収し、利益水準は引き続き改善を続けると見ています。
商業施設については、訪日客増加に伴うインバウンド消費額が過去最高を更新しており、テナントの売上は堅調に推移しています。
主要消費エリアである都心プライムエリアにおいては空室率が過去最低水準を更新するなど需給は逼迫しており、売上高連動型賃料を採用する物件では、売上増加が直接賃料増加につながる構造となっていることから物件収益の改善も進んでいます。インバウンド需要は引き続き拡大基調にあり、インフレや円安の恩恵も受けやすいセクターであることから当面は堅調な推移が見込まれます。

――金融市場の動向について、2025年後半は金利が大幅上昇しましたが、現在の金融市場についてどのように見ていらっしゃいますか。また不動産価格へ与える影響についてどのようにお考えでしょうか。

2025年12月に開催された日本銀行の金融政策決定会合の議事要旨では、円安が物価上振れ要因となりやすい状況にあることや、賃金と物価が上がりにくいという従来のノルム(人々の考え方や規範)が既に解消しているとの認識が示されました。また、一部委員からは「適時の利上げが将来のインフレ抑制や長期金利の安定につながる」との発言もあり、金融政策はより積極的な運営へとシフトしつつあるといった印象を受けています。現時点では、日銀は物価・為替・賃金動向を見極めながら追加利上げのタイミングを図っている局面にあると見ており、2026年通年で複数回の利上げを予想する金融関係者が増えています。
不動産市場においては、オフィス賃料は上昇傾向にあるものの、一般的に契約更新は2年のサイクルで行われるため、インフレや需給逼迫が賃料に反映されるまでには一定のタイムラグがありますが、比較的賃料上昇が反映されやすいアセットタイプと考えています。一方で、特に長期間にわたる定期借家契約を締結しているテナントが存する物件やアセットタイプにおいては、金利上昇等による費用増加に対して賃料引上げの調整が遅れるケースも見られます。 また、ホテルや商業施設のように毎月の運営状況や売上高に連動して賃料を受け取れる物件では、例えばホテルでは稼働率やADR(平均宿泊単価)の上昇、商業施設では商品販売額の増加が比較的タイムリーに収益へ反映されます。こうした物件では、金利上昇によるコスト上昇を上回る収益成長を実現できる可能性があります。 結果として、金利上昇局面では「収益が早期に伸びる物件」と「収益調整に時間を要する物件」で分けた場合には前者タイプの物件が選好される傾向にあり、従来選好されていた後者タイプの物件を中心に運用する場合には成長が難しくなりつつあります。

 

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