2019年05月28日

スターアジアグループ対さくら総合リート投資法人 合併を巡る攻防(2)

時事解説

【注意】
当該記事は、2019年5月16日から5月23日17:30までに公開・公表された資料や当事者の見解に基づいて執筆しています。

 

さくら総合リート投資法人を自陣営J-REITに取り込もうとするスターアジアグループとそうはさせじとするさくら総合リート投資法人の攻防が開幕した。
前回記事「スターアジアグループ対さくら総合リート投資法人 合併を巡る攻防(1)」ではライオン合同会社を中心とするスターアジアグループ(以下、便宜的に「スターアジア側」と表記)とさくら総合リート投資法人(以下、同投資法人)は合併か独立かを賭けて臨時投資主総会でぶつかるという見通しを示した。
今回は、前回記事作成後に発表された新規プレスに基づいて上記見通しに変更の必要があるか検討したい。

まず5月16日、スターアジア不動産投資法人が「スターアジアグループによるさくら総合リート投資法人投資主総会招集許可申立に関するお知らせ」を開示した。
これによると、スターアジア側がさくら総合リート投資法人に請求した、執行役員と資産運用会社の交代を議案とする臨時株主総会の開催について、回答期限日の5月13日を超えても同投資法人側から反応がなかったという。
これを受け、スターアジア側は同投資法人執行役員に代わって自身が臨時投資主総会を収集することの許可を関東財務局に申し立てた。

対する同投資法人は、翌17日に「少数投資主による臨時投資主総会の招集請求等に関する本投資法人の意見」、「さくら総合リート投資法人の投資主の皆様へ スターアジアグループからの提案に対する見解」という2本のプレスを示し、スターアジア側への対決姿勢を鮮明にした。
まず「少数投資主による臨時投資主総会の招集請求等に関する本投資法人の意見」で同投資法人はスターアジア側の臨時投資主総会招集請求について「本投資法人の投資主を害する意図を有する濫用的なものであり、投資主の権利の濫用であって、これを認めることはできません」として、開催しないことを明らかにした。
続いて「さくら総合リート投資法人の投資主の皆様へスターアジアグループからの提案に対する見解」では、スターアジア側が同投資法人執行役員・資産運用会社の交代を狙った議案を提案したことに対し、「合併の承認には投資主総会において、投資主の3分の2(約67%)以上の賛成が必要であるにもかかわらず、過半数(50%)の賛成のみを得て、合併を強引に成立させること」を狙ったものと指摘している。

そして5月21日動画、スターアジア側は動画サイトYouTubeに設けている公式チャンネルから今回の案件に関する2本目の動画を公開した。
そこでスターアジア側は、合併に向けた提案を公表して以降、同投資法人とスターアジア不動産投資法人双方の投資口価格が堅調に推移していることを市場からの好意的な反応と評価した上で、自陣営の提案に対して肯定的な著名アナリストのレポートや投資家から寄せられた声の一部を紹介。
また、同投資法人が昨年コンフォモール札幌の売却益を未遂に終わった増資に係る専門家報酬と相殺したことを取り上げ、投資主は年間ベースの一口当たり分配金450円の遺失利益を強調し、同投資法人投資主に自陣営への支持を訴えた。

これらのプレス等を見る限り、筆者の「両陣営は合併か独立かを賭けて臨時投資主総会でぶつかる」という見通しに変更の必要はなさそうである。
問題はスターアジア側の臨時投資主総会招集請求が財務局に認められるか否かだが、これも筆者は「開催の許可が下りる」と考えている。

そもそも投資主の投資主総会開催請求とそれが投資法人に受け入れられなかった場合の対応について、投資信託及び投資法人に関する法律は会社法に準拠して定めを置いている(※1)。
その会社法の規定によれば、ある株式会社の株主が裁判所に臨時株主総会の招集請求を認めるように申し立てた場合、裁判所は申立受理後に審問を行って当該株式会社側の意見を聴取し、当該請求に許可を与えるか否か判断する。
気になるのは当該請求に許可が下りず却下となる場合だが、それは以下に挙げた2件のどちらかに該当した場合である(※2)。
【株主総会招集請求が裁判所に却下される場合】
1.要件不備
 裁判所への招集請求申立と先立って行われた株式会社に対する臨時株主総会招集
 請求の内容に齟齬や不一致がある等、申立内容が一定の要件を満たさない場合。
2.株主の権利濫用
 客観的にみて株主総会を招集することに実益がないばかりか有害であることが
 明らかであり、かつ申立人に当該株式会社への害意があると認められる場合。
注:今回の事例では「裁判所」は「地方財務局」、「株主」は「投資主」、「株式会社」は
 「投資法人」とそれぞれ読み替える。

上記要件を見ると、まず要件不備についてはスターアジア側もよくよく書類等を準備し、内容を確認した上で申立てに踏み切っていると考えられるため、成立は考えにくい。
次にスターアジア側の請求が投資主の権利濫用に該当すると認定される場合だが、これについては同投資法人側が「スターアジア側提案が権利濫用に該当する」と関東財務局側に認めさせる必要がある。
そのために同投資法人側としてはかなり具体的な数字や証拠に基づいた主張を意見聴取の場で展開しなければならないと考えられるが、現時点で公表されているプレス類から推測する限り、同投資法人側がそこまで強力な反論材料を有しているとも考えにくい。
したがって「臨時投資主総会は財務局の許可を受けて7月内に開催される」という筆者見通しも今のところ変更の必要はないだろう。

そうなると、今後の焦点は以下の2点である。
・7月の臨時投資主総会に向けて同投資法人側がスターアジア側議案に対抗するためにどのような議案・手段を駆使してくるか。
・最終的に投資主の多数の支持を勝ち取るのは両陣営のどちらか。

この2点については現時点ではまだ不透明な部分が多く具体的な予測を出すことは難しいが(前回記事で指摘したように、同投資法人側はスターアジア側議案が「みなし賛成」で成立することを間違いなく阻止してくるだろうが)、両陣営の間に走っている緊迫感がさくら総合リート投資法人の投資主のみならず、スターアジア不動産投資法人の投資主、さらにはJ-REIT市場全体に多くの実りを生み出す契機になることを期待して事態の推移を注視したい。

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