2018年11月05日

日銀政策会合、金融緩和を維持

10月29日週のマーケット概観

(写真/iStock)

マーケット全般

10月29日週の市場環境を振り返ると、株式市場の反発が目立つ1週間であった。
当該週には30日に9月鉱工業生産指数、31日に中国製造業PMIの発表がそれぞれあり、9月鉱工業生産指数は台風等の災害や外需減速によって前月比1.1%低下、中国製造業PMIも米国との貿易戦争の影響が表れ始めたか2016年7月以来の低水準となる50.2ポイントという結果であった。
このように指標は決して明るい内容とは言えない結果だったものの、ソニーやホンダといった大企業で好決算や業績予想上方修正が続いたこともあり、株式市場は先週とは打って変わっての強気ムードとなった。
また、31日には日銀政策会合の結果発表があった。内容としては従来の金融緩和策の維持を確認するものであったが、注目されるのは今年度以降の物価上昇率予測を以下のように引き下げたことだろう。

<日銀物価見通しの変更>
 ・2018年度:7月時点 +1.1% → 今回 +0.9%
 ・2019年度:7月時点 +1.5% → 今回 +1.4%
 ・2020年度:7月時点 +1.6% → 今回 +1.5%
 ※2019年度、2020年度の数字は「消費税率の引き上げの影響を除いた数字」。

日銀は物価上昇率2%を目指して金融緩和策を続ける姿勢を崩しておらず、その状態で今後の物価上昇率予測を引き下げたことは、金融緩和の出口がさらに遠のいたことを意味する。
資金借入に伴う金利負担の低減という意味でJ-REITにとって望ましい結果と言える。

今後の市場だが、目先では11月6日の米国中間選挙の結果が注目材料となる。下馬評では「上院は共和党が多数派維持、下院は民主党が多数派奪還」という「ねじれ」の出現を予想する声が多く、もしこの通りになれば、将来的にトランプ政権の景気対策が下院を押さえる民主党の抵抗で頓挫して市場に冷や水が浴びせかけられる事態も想定されよう。
その他の注目材料としては、日本国内では11月8日の9月機械受注統計(船電除く民需)、海外では同じ11月8日のFOMCがそれぞれ挙げられる。

J-REIT市場

J-REIT市場にフォーカスすると、10月29日週で活発に取引されたのは以下の銘柄であった(出来高の多い順に上位10銘柄を提示)。

コード 名称 出来高(口) 分配金利回り(11月2日時点) 投資対象
3298 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 211,106 5.24% オフィス
8963 インヴィンシブル投資法人 111,576 7.19% 総合
3295 ヒューリックリート投資法人 122,743 4.13% 総合
3476 投資法人みらい 67,058 6.32% 総合
8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人 61,114 4.81% ホテル
3281 GLP投資法人 56,158 4.62% 物流
3462 野村不動産マスターファンド投資法人 46,201 4.23% 総合
3493 伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人 45,732 4.54% 物流
8953 日本リテールファンド投資法人 40,578 4.26% 商業
8954 オリックス不動産投資法人 37,498 3.91% 総合

上位3銘柄は先週と変わらないが、その下では野村不動産マスターファンド投資法人が順位を上げたり、伊藤忠アドバンス・ロジスティクス投資法人が新たにランクインする等の動きが生じている。
各銘柄の出来高を見ると総じて先週より増加しており、値動きが安定的な一方で取引自体は活発に行われたことが窺える。
この背景には、米中貿易戦争の帰趨や11月6日に迫った米国中間選挙といった政治的リスクにさらされている株式より、低金利や根強い内需が支えるJ-REITを選好する投資家の動きを想定することができよう。
その意味で、「マーケット全般」の繰り返しになってしまうが、金融緩和、すなわち低金利環境の維持が改めて確認された日銀政策会合の結果は、J-REITの投資口価格にとって力強い下支え材料と言えそうだ。

ReitInfo.com

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