2016年06月09日

【前編】川口有一郎氏による「マイナス金利による不動産市場への影響とキャップレートの見方」

Japan REITセミナー

政府がアベノミクスを発動し、それを日銀がサポートする形で大規模金融緩和に踏み切って約3年が経ちました。その間、株式や不動産といった資産価格は持ち直し、企業収益は拡大を続けた一方、賃上げや設備投資、個人消費の動きは鈍く、経済全体としての改善ペースは緩やかな状態にとどまっています。その現状を打破し、日本経済を加速させるために日銀が行ったのが日本金融市場初となるマイナス金利政策です。
今回は、その日銀のマイナス金利政策が及ぼす影響を中心として、不動産市場の今後の展望について早稲田大学大学院ファイナンス研究科 ファイナンス研究センター所長の川口有一郎教授に以下の章立てで分析・説明をして頂きました。

1.マイナス金利と不動産ビジネス
2.将来キャップレートの予測
3.不動産市場の予測学
4.不動産ビジネスの見通し

1.マイナス金利と不動産ビジネス

最初に川口教授が取り上げたのが、導入から4か月経ったマイナス金利政策です。
マイナス金利政策が導入された背景ですが、これまで日銀は資金供給の拡大が人々のインフレ予想を高め、それが物価や賃金に反映されることでデフレから脱却するという構図を描いていました。しかし、実体経済の反応が鈍いまま、2015年夏頃からは金融市場が日銀の振付にのってこなくなりました。そこで生じた手詰まり感、日銀限界説を打破するために導入されたのがマイナス金利政策だと川口教授は指摘しました。

こうした背景で導入されたマイナス金利政策の狙いとして川口教授は以下の点を挙げます。
1.銀行の資金を融資等に回して企業の設備投資や個人の住宅購入を促進させる。
2.投機家の円売りを呼んで為替市場で円安を実現する。

しかし、現時点では狙いが達成されず、利ざや縮小を警戒する銀行を委縮させる等の副作用の方が前に出てしまっている状況と整理しました。
その上で、マイナス金利が不動産ビジネスに与える影響として川口教授が指摘したのが、評価基準の揺らぎです。これまで不動産の価格評価、収益性評価に長期国債(特に10年国債)の利率を利用していたのですが、マイナス金利が導入されたことで10年国債の利回りもマイナスに沈んでしまいました。このマイナスに沈んだ利率を使い続けるのか、他の数字を用いるのか、他の数字を用いるなら何を使えば適当なのか、非常にわからない時代に入ってきたというのです。この評価基準の揺らぎが、バブルに繋がりかねない不合理な投資活動を誘発してしまう可能性には注意が必要そうです。
また川口教授は、日本銀行はJリートの買入を継続し、5月19日には12銘柄について大量保有報告書を提出するまでになったことにも触れ、「このままでは、投資家が個々のリートの調査に力を入れず、日銀の売買動向のみ注視するようになってしまうのではないか。それは市場の分析能力喪失に繋がってしまうのではないか」と警鐘を鳴らしました。

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