2016年05月27日

【後編】JAREFE・ARES不動産投資インデックスセミナー

日本不動産金融工学学会(JAREFE)、一般社団法人不動産証券化協会(ARES) 主催

1.ARESの不動産投資インデックスAJPI・AJFIの概要と展望~本格稼働(私募REITインデックスAJFI-OURs公表開始等)の概要と今後の展開等について~

最初の講演はARESの澤田氏が講師となり、今年2月末から本格稼働の始まったARES発表の不動産投資インデックスの紹介、その利用方法の説明をされました。
現在、ARESが公表している不動産投資インデックスは以下の3つです。
・AJPI
→J-REITや国内不動産私募ファンドが保有している不動産のパフォーマンスが対象。
・AJFI
 →J-REITや国内不動産私募ファンドのパフォーマンスが対象
・AJFI-OURs
 →私募REITのパフォーマンスが対象
一見すると、どれも実物不動産に投資をしていない個人投資家には縁遠いものに感じられます。しかし、澤田氏が強調していた以下の点を押さえることで、個人投資家も不動産投資インデックスを活用できるのではないでしょうか。
・不動産投資インデックスをチェックすることで、不動産市場、ひいては日本経済のサイクルやトレンドをより正確に把握することができる。
・不動産投資インデックスの推移とJ-REITや投資信託のパフォーマンス推移を比較することで、J-REITや投資信託のパフォーマンスが、運用者の手腕でもたらされたのか、
単に市場動向に流されているだけなのか、判断がつけやすくなる。

2.不動産投資インデックスの意義と活用方法

続いてはドイチェ・アセット・マネジメントの小夫氏が講師となり、日本の不動産投資インデックスと他の金融商品インデックス、外国の不動産投資インデックスとの比較で見えてくる風景を説明されました。
その中でも以下のトピックは、不透明感漂う不動産市場の今後を予測する上で注目すべきものだと思われます。
・日本の不動産投資インデックス(AJPI)とイギリスのそれ(IPD)を比較すると、 日本の不動産市場はイギリスの不動産市場を1~2年遅れて後追いする傾向がある。
・アジア太平洋地域の主要不動産市場(日本、オーストラリア、香港、シンガポール)のインデックスを比較すると、機関投資家にとって魅力的なリターンを現在出しているのは日本とオーストラリアである。
・不動産価格の値動きは、株式や債券からの独立性が強い。

3.不動産インデックスの利活用について

3つ目の講演は、早稲田大学大学院ファイナンス研究科の川口教授が講師を務めました。
川口教授は不動産投資インデックスの分析から、日本の不動産価格と株価には循環変動を繰り返す傾向があると指摘し、各金融商品価格のインデックス、取引量等を比較することで市場変動の予兆を掴むことが可能ではないか、という見通しを示されました。

4.年金ゲートキーパーから見た不動産投資インデックスへの期待

「年金ゲートキーパー」とは聞き慣れない言葉ですが、年金基金に資産運用に関するアドバイスや情報提供を行ったり、あるいは年金基金から資産運用委託を受けた信託銀行や投資顧問業者をまとめて指す言葉です。
いわば年金マネーを実際に動かす人たちとも言えますが、彼らの動静に不動産投資インデックスがどんな影響を与えるのか、みずほ信託銀行の小川氏が講演をされました。
氏は、長期投資で安定した利回りの獲得を目指す年金とその運用者にとって、不動産投資インデックスの整備により不動産投資を始めるタイミング、投資の拡大・縮小を切り替えるタイミング、そして投資を完了するタイミングが計りやすくなったことは非常に重要な進歩と評価しました。

5.国内外の年金基金による不動産投資の実態と不動産投資インデックス

最後の講演は野村證券の西迫氏が講師となり、不動産投資で先行する海外年金基金のポートフォリオやその構築にあたって不動産投資インデックスがどのように利用されているかという事例紹介を行うとともに、今後、日本でも不動産インデックスの整備により年金基金がより効率的なポートフォリオ構築を進めていくこと、そして不動産のリスク・リターン分析の深化に期待を表明してセミナーを締めくくりました。

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