2017年05月26日

森トラスト総合リート投資法人の物件売却について/アイビー総研 関 大介

森トラスト総合リート投資法人(MTR)について記載します。


1. 森トラスト総合リート投資法人がイトーヨーカドー新浦安店を売却

MTRは、J-REIT価格が軟調な中で、3月上旬以来となる18万円台(5/24時点)を回復しました。
MTRの価格が上昇した最大の要因は、5月16日に保有物件の「イトーヨーカドー新浦安店」の売却を公表したことです。
MTRは、16年7月に本物件のテナントであるイトーヨーカ堂が17年7月30日に契約を解約することを公表していました。

同様の退去に伴う売却として、野村不動産マスターファンド投資法人(NMF)が17年6月に売却予定の「イトーヨーカドー東習志野店」という事例があります。
NMFの売却価格は7億円弱となり若干の売却益が出ることになっていますが、この物件はNMFが合併によりトップリート投資法人(TOPR)により7億円弱で受入れた物件です。TOPRの取得価格は89億円となっていましたので、実質的には本物件で取得価格対比では82億円を超える損失が生じたことになります。

このような事例があったため、投資家はMTRの物件売却損の発生を懸念し、MTRの価格は16年7月末から18万円を下回る期間が多くなっていました。
この懸念は本物件の立地から考えれば杞憂とも言えるものであり、売却益が出る可能性が高いという点を筆者が16年10月に行ったセミナーで説明していました。


2. 物件売却に伴う業績予想修正

実際に本物件の売却では、28億円の売却益が発生する見込みとなっています。
MTRは売却益の計上に伴い、一部を内部留保しますが2017年9月期(第31期)の1口当たり分配金は過去最高の4,900円(※1)となる予定です。
分配金が大幅に増加するため、分配金利回りは4.6%を超えて(5/24日)高くなっていますが、売却益が剥落する2018年3月期(第32期)の予想分配金3,650円を元に利回りを算出しても、3.9%を超える利回り(※2)となっています。

MTRの利回りは第32期の業績予想ベースでも市場平均と同程度であり、当面の懸念材料が払拭されたことから割安感は残った状態になっています。
またMTRは、本物件の売却により減少した資産規模となる100億円程度の物件取得を比較的早期に進める方針を示しています(※3)。
このため、物件取得による分配金の増加も期待できる状況です。

※1: これまでの最高額は2006年9月期23,075円。なおMTRは2014年9月期より投資口を5分割しているため、分割換算すると4,615円となる
※2: 3,650円×2÷184,400円(24日終値)
※3: 森トラスト総合リート投資法人「第30期決算説明会資料」P18

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