国内金利上昇の影響が少ない3銘柄とは?/アイビー総研 関 大介
1. J-REIT価格の上昇基調は続く
J-REIT価格は上昇基調の推移が続いている。東証REIT指数は5月23日に1,714ポイントであったが、6月6日に1,750ポイント台を回復し、7月7日に終値ベースでも1,800ポイント台を回復した。東証REIT指数の25日移動平均も1,780ポイントまで上昇しており、2024年5月以来の水準を回復したかたちになった。
また、7月の価格推移は、4月以降と同様に米国長期金利動向に左右されない状態となっている。米国10年債利回りは、6月下旬から低下基調で7月1日には4.2%を切る水準となっていたが、その後は上昇し8日以降は4.4%の水準となっている。
一方、この期間の東証REIT指数は1,780ポイントから1,800ポイントのボックス圏での推移となっているため、3月までのような米国長期金利上昇に伴う下落とはなっていない。
2. 国内長期金利上昇の影響は?
したがって今後J-REITの価格が再度下落傾向になる要因としては、国内長期金利の上昇となる。
国内長期金利上昇による悪影響の1点目としては、J-REIT利回りと国債利回りとの乖離(イールドスプレッド)の縮小だ。ただし、この点については過去コラム「国内長期金利上昇がJ-REIT価格下落要因となるのか」でも記載した通り、すでにイールドスプレッドが広くなっているため影響は少ないと考えられる。
2点目の悪影響は、金利上昇により利息が増加するため収益悪化となる可能性が生じる点だ。ただし、この点も上記連載で記載した通り、全銘柄で見れば(※1)借入金のうち88%が固定金利での資金調達となっており、借入期間も7.14年と長いため影響は少ない。
ただし、銘柄により固定金利比率や調達期間には違いがある。したがって個別銘柄に投資する場合、金利上昇による収益悪化リスクを重視するなら固定金利比率が高く、借入金の調達期間が長い銘柄を選択する必要がある。固定金利での調達であれば、借入金の借換えまで国内長期金利上昇の影響を受けず、調達期間が長いと年間の借り換え額が少なくなるためだ。
3. 国内金利上昇の影響が少ない3銘柄とは?
具体的に、固定金利比率と調達期間をベース(※2)算出した金利上昇の影響が少ない上位3銘柄を示したものが図表となっている。
例えば、日本プロロジスリート投資法人(3283)は、借入金の固定金利比率が97%と高く、調達期間も8.5年となっている。
なお、アドバンス・レジデンス投資法人(3269、ADR)は調達期間が全銘柄の中も最も長く、固定金利比率も高い銘柄であるが、住宅系銘柄であるため借入金比率を加味すると上位3銘柄からは外れる。
借入金比率を加味した場合は、フロンティア不動産投資法人(8964)が代りにランクインすることになるが、ADRは別の要因で高い借入金比率を補完出来ているため影響が少ないと考えられる。
別の要因とは、保有物件の高い含み益率だ。ADRは直近決算期で全銘柄の中で2番目(※3)となる59%の含み益がある銘柄だ。含み益をベースにした時価ベースでの借入金比率が低くなることに加え、物件売却による増配も期待できる銘柄であるため、借入金比率が収益に与える影響は少ないと考えられる。
ただし、住宅系銘柄全般に言えることであるが、国内金利上昇局面では高い借入金比率の銘柄は価格が軟調になりやすい点には注意が必要となりそうだ。
※1 2025年5月末時点。全銘柄の中央値ベース
※2 固定金利比率×調達期間で算出
※3 2024年度下期時点

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