大和ハウスリート投資法人の運用状況と見通し/アイビー総研 関 大介
今回は、4月17日に2015年2月期決算を公表した大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHR)について記載します。
DHRは、物流施設を主体に商業施設にも投資を行う複合型の銘柄です。
3月3日に上場後2回目となる増資を公表し、物流施設7物件を484億円で取得します(※1)。ポートフォリオの規模は2015年8月期末に1,960億円となり、上場期である2013年2月期から800億円を超える増加となりました。
増資時に取得する物流施設は、既存ポートフォリオと同様に全てテナント仕様で建築したBTS型(※2)となっています。
ポートフォリオの拡大に伴い投資法人の基盤が整備できたとして、2015年8月期から継続的な成長によりポートフォリオの規模4,000億円を目指す「第2ステージ」に移行するとしています。
巡航ベースの目標分配金は、上場直後の1口当たり7,215円から第2ステージには8,400円と16%以上も増加しています。DHRが4月17日に公表した2016年2月期予想分配金は8,800円としていますので、目標分配金8,400円は低いように見えます。しかし、2016年2月期の分配金が高くなっている理由は、今回の増資で取得した物件の固定資産・都市計画税が費用化されていないためです。
このように税金や増資に伴う費用及び物件売却損益の影響を除外した分配金のことをJ-REITでは「巡航分配金」と表現する銘柄が多くなっています。
外部成長は、取得競合が激しい物流施設に関してはスポンサーの大和ハウス工業が物流施設の開発を進めているため(※2)、懸念材料が少ないと考えられます。但し、物流施設の価格高騰の影響を受けるため、DHRが巡航分配金の増加傾向を続けるためには、今後も1口当たり出資額を上回るプレミアム増資が必要な状況が続いています。
なお、大和ハウス工業は、非上場型の私募REITの組成を進めていますが、このREITはユニクロを展開するファーストリテイリング向けの物流施設の開発のために設立されるとしているため、DHRの外部成長への影響は軽微です。
また今回の増資により物件取得額に対する借入金比率は、2015年2月期末の52.5%から50%まで低下する見込みです。DHRは増資時にはスポンサーから物流施設を取得し、増資により低下した借入金比率を利用して商業施設を取得していますので、2016年2月期の予想分配金は物件取得による増加も期待できそうです。
※1:7物件のうち6物件414億円は4月1日に取得済、残る1物件は6月1日取得予定
※2:ポートフォリオの特徴やスポンサーの物流施設開発状況については、2014/3/14のコラム参照
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