ケネディクス商業リート投資法人の上場/アイビー総研 関 大介
今回は、2月10日に上場予定のケネディクス商業リート投資法人(証券コード3453、以下KRR)について記載します。
KRRのスポンサーは、投資法人の名称が示す通りケネディクス(東証1部、証券コード4321)です。ケネディクスは、既にオフィス系(ケネディクス・オフィス投資法人)、住居系( ケネディクス・レジデンシャル投資法人)銘柄の運用を行っています。
従って、商業施設に特化して投資を行うKRRの上場により、ケネディクスはJ-REITの主要投資用途を網羅したかたちになりました。
KRRは、投資方針上の特徴として生活密着型商業施設に重点投資することを目論見書に記載しています。他の商業施設系銘柄は、郊外型商業施設(イトーヨーカ堂やイオンなどのGMSがメインテナントの物件)や都市型商業施設(外資系ブランド店などメインテナントの都市中心部物件)を主要な投資対象としている点とKRRは異なるということです。
食品スーパーを核テナントとする物件が多いことは他銘柄との差異となっていますが、実質的には郊外型商業施設中心の銘柄という区分が可能と考えられます。
一方で目論見書に記載されている通り、食品スーパーが実店舗のショールーミング化に強いという点はKRRの強みになりそうです。ショールーミング化とは、実店舗で商品を確認し購入はインターネットで行う(ネットショッピング)というものです。食品などは、配送料や配送までのタイムロスという点でネットショッピングに対抗できる商品となっているためです。従って上場後も食品スーパーを核テナントとする物件取得が継続できるとすれば、他の商業施設系銘柄との差別化は可能と考えられます。
またKRRは上場時に18物件を取得額808億円で取得する予定ですが、そのうち取得額が50億円を超える6物件は実際に全て複数テナントで構成され、入居しているテナントの平均数が43社となっています。つまり商業施設系銘柄の上場時ポートフォリオとしては、テナント分散効果が高いものとなっています。
但し、賃料に占める上位10社の割合が上場時に45%と高い点だけでなく、商業施設系銘柄に投資する上で重要な判断材料となる賃料更改条件は大半が未開示になっています。投資家が、賃料減額リスクの発生時期を判断できない情報開示となっているのです。
従って現時点での情報開示内容では、投資家がKRRに長期投資を行うことはリスクが高いものと考えられます。この点について資産運用会社は、決算説明会資料などで投資家に対して決算期毎の総賃料に対する賃料更改割合などを示すこと等で改善していく必要がありそうです。
KRRは、IPO発行価格は23万円と設立時の20万円に対して15%のプレミアムが付いた価格となりました。足元のJ-REIT市場は長期金利が上昇しているためやや地合が悪い状況ですが、既存49銘柄のうち予想分配金利回りが4%を超える銘柄は1銘柄だけとなっていますので、上場後の価格上昇が期待できそうです。
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