イオンのREIT設立について/REITアナリスト 山崎成人
先日、イオンがREITの投資法人を設立予定との新聞報道がありました。
今現在はIPOの実施が発表されていませんが、近日中との噂もありますので、この投資法人について考えてみたいと思います。
ご承知のようにイオンは郊外型ショッピングセンターの大手ですから、REITの組成資産はこれら保有の郊外型SCがメインになると考えられます。
投資法人設立のスポンサー企業から組成資産を譲受けするのはREITの立ち上げでは一般的ですが、テナントまでもスポンサー企業になるという例は異例です。
このようなREITでは、何よりも投資家とスポンサー企業との利益相反が問題になりますので、資産譲渡時のみならず、その後の資産運用でも、十分に投資家利益が守られるという保証が必要です。
一方、イオン側にすれば、店舗展開による投下資金の早期回収が図れるのと、資産が他に渡ることで店舗賃料の引き下げ要求も出来るようになりますから、上手く行けば多くのメリットが享受出来ます。
勿論、その反対側には、投資家利益の減少や投資リスクの増大がありますから、そのバランスを保ったり適正な運用を行うという仕組みや体制が求められます。
これは文章で書けば簡単ですが、実際に作るとなるとREITの資産運用体制からみて現実的には大変難しい点です。
私の推測では、テナントとの賃貸者契約には定期借家契約を多用するであろうと思いますが、そこで注目されるのは契約期間と賃料更改規定です。仮に20年の定期借家契約になっていたとしても、特約で期間中の賃料改定が可能になっていれば、定期借家契約の効果が半減します。
既存REITの保有物件を見ると、定期借家契約形態を採っている物件も数多くありますが、その多くには中途賃料改定規定の特約が付されていますから、期間途中での賃料改定が可能になっています。
従って、イオンの場合もこれらの例にならって賃料改定特約を付ける可能性がありますが、テナントがスポンサーという点で、その意味合いは大きく変わってきます。
REITの資産運用会社の話では、商業施設の場合、テナントからの賃料引き下げ要求は日常茶飯事で、資産運用会社の担当者の顔を見れば持ち出してくると嘆いていましたが、これがスポンサー企業の店長からの要求であれば圧力が格段に高まります。
こういう要求にイオンからの出向者で構成される資産運用会社が常にガード出来るという事は現実的には考えられません。
この点だけでも難しい要素をはらんでいますので、果たしてどのような仕組みになるのかを今後ともウォッチしていこうと考えています。
- 2024/11/15
- トランプ大統領の再選がJ-REIT市場に与える影響/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
- 2024/11/01
- 「売られすぎ」のJ-REIT価格/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
- 2024/10/15
- 2024年度上半期の価格動向/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
- 2024/09/27
- 米国の利下げとJ-REIT価格への影響/アイビー総研 関 大介 【関 大介】
- 2024/09/13
- 三井不動産ロジスティクスパーク投資法人の合併について(2)/アイビー総研 関 大介 【関 大介】