変貌するREIT投資評価(その1)/関 大介
2008年秋のリーマンショック以後のJ-REITは、合併やスポンサーの変更の動きが相次ぎ、市場開設以来最も変動した期間となった。
従って、今後のJ-REIT投資は市場の変化に応じて判断材料を変更することが重要だ。
まず合併銘柄が登場したことで判断基準が最も変わる指標値は、LTV(借入金比率)である。
従来のJ-REITでは、LTVが高くなると増資懸念が強くなり株価を押し下げる要因になっていた。増資による分配金の希薄化を投資家が懸念し、その銘柄の売却を行うためだ。
しかし合併銘柄は、増資が希薄化につながらない可能性が高い。その要因は、合併差益(負ののれん)が存在するからだ。J-REITは、利益のほぼ100%を投資家に分配金する仕組みになっていて、利益の内部留保がない。これは物件売却などの一時的な利益であっても同様である。但し、合併差益はJ-REITで唯一内部留保が認められている。つまり合併銘柄は、増資を行っても合併差益を分配金に充当することで希薄化を回避できる。
アドバンス・レジデンス投資法人は、合併後には60%を超えるLTVとなり増資が避けられない状況になっていた。従来の投資基準から見れば、少なくとも増資を待ってからの投資という評価になっていたであろう。実際に6月になり増資を公表したが、合併差益を利用することで増資前に公表していた分配金を維持している。つまり合併銘柄は、合併差益の存在で高いLTVであっても投資基準としては中立となる。
また合併実例の増加により明確になった点は、J-REITにおけるPBRの評価である。
J-REITは、賃貸用の不動産だけを資産として保有している。また取得時には鑑定価格を開示しているため資産価値は大幅に変動せず、PBRを比較した割安度は株式市場よりも有効なものと考えられていた。実際にリーマンショック以後、10万円以下まで売り込まれていた銘柄は2009年3月から8月にかけてJ-REIT価格の回復を牽引した。この要因は、政府側の救済策によりJ-REITの破綻懸念ががなくなった以上、PBRから見てそれらの銘柄の割安感が強かったことによるものだ。
しかし、J-REITの合併事例が重なることで、PBRは合併対象となった銘柄の割安度を判断する材料とはならないことが明確になった。これはJ-REITの合併比率が、PBR算定の際に使用される資産評価より株価や利益水準になって判断される手法の評価が重視されるためだ。
合併対象となる銘柄は、金融費用の増加によって利益が大幅に落ち込み、分配金も減少することで株価も下落することになる。このような銘柄はPBR評価よりも厳しい合併比率となる可能性が高い。
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