2007年08月31日

サブプライムローン問題とJ-REIT/REITアナリスト 山崎 成人


 米国サブ・プライムローンの焦げ付きによる信用不安が広がりつつあります。
現在は、投資ファンドやサプ・プライムローンを組み込んだ証券化商品の購入者の問題として捉えられていますが、この背景には米国の住宅価格の下落があります。
かつての日本のバブル崩壊時のように、価格高騰した住宅にローンを組んで購入した個人が大きな含み損を抱えた事で、返済不能となった訳ですが、米国の場合、必ずしも実需要でない個人が多く含まれている可能性があります。
日本のバブル崩壊時にも、実需ではない個人投資需要が含まれてはいましたが、恐らくその割合は米国程多くはなかったと思います。
従って、日本は返済猶予や返済金の一時減額等で凌ぎましたが、投資需要等の仮需要対象に販売した場合は、返済猶予等では対応が出来ません。
昭和50年代に起こった別荘地ブーム後の価格下落の時は、販売した別荘地の8割近くが焦げ付きを起こしましたが、実需ではなかった為に返済持続意欲のない購入者が殆どでした。
当時のローンは売主保証が付いていましたので、焦げ付いたローンは金融機関から代位弁済を求められ、最終的に売主が個々の購入者と折衝しました。
この時、返済遅滞を起こしている購入者は代物返済(購入した別荘地を返すことでローンを帳消すにする)を要求してきましたが、実際には、既にローンの残債以下の価格まで下落していましたので、代物返済ではローン債務が残ってしまう状況でした。
然しながら売主という立場では、代物弁済では足りない程価格が下落したとして追金を求めるのは難しかった事もあり、渋々損失処理したという経緯があります。

 米国のサブ・プライムローンも、恐らくこの状況に近いのではないかと思われます。
看過すればする程含み損が増えますので、何処かで見切って損失処理する方が、金融機関と個人の双方にとってメリットがあるという考え方が強くなるのではないかと考えられます。
日本の住宅購入者のように、最後のギリギリまで返済努力を続ける風潮は少なく、早期にキブアップすることで負担を逃れるという事になれば、住宅価格の下落が止まらない限り、デフォルトは増え、所謂、不良債権が拡大するということなります。

 ここまでは、大方が予想している範囲だと思いますが、JREITにとっては米国住宅価格の下落が米国REITに与える影響が問題です。
不動産投資リスクというものが見直され、リスク・スプレッドの上乗せが要求されるでしょうから、この見方で海外投資家が動けば、JREITの株価も下落します。
この場合問題となるのは、日本の不動産の市場価値というものに明確な基準がないという事です。
JREITの下限価値は、保有不動産の価値だとも言えますが、この価値は不動産鑑定評価に準拠していて、不動産市場が変動している時は、市場価値とは言えないのが実態です。
現在の日本の不動産市場には大きな変動は見られませんが、既に不動産取引で大きなシェアーを占めているJREITを含めた不動産ファンドの勢いが低下すれば、不動産市場が変動します。
勿論、日本でも一程度の不動産価格の調整は必要ですから、現在の不動産価格を維持する必然性はありませんが、どの程度が底なのかを市場に知らしめる必要があります。
その為には、JREITが取得する価格(収益利回り)を明示して、その価格まで下がったら積極的に動く必要があります。
JREITは、現在調整局面にありますから各銘柄も慎重になっていますが、逆にこういう局面だからこそ、自らの考え方をアピールしてマクロの動きを牽制する必要があります。
特に、レジデンス銘柄の役割が重要です。
米国の住宅価格の下落が日本に飛び火する前に手を打っておく事で、影響を軽減出来ますので、市場に対して不動産価格の見方を積極的に説明する等の方策が欲しい処でもあります。

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