金融庁の監督姿勢の強化について/池島 麻美
不動産投資信託(REIT)や私募ファンドは11.5兆円に達しております。この二年間で約3倍になっているといわれております。
不動産投資の過熱化の原因は、不動産ファンドによる資金の流れであり、特に都心部の不動産への流入は加速しています。この投資マネーの流入で上昇が続き、「不動産バブル」との見方もあり、見解は様々です。
REITが取得した最高額の物件の記憶に新しいものとして、ジャパンリアルエステイト投資法人の「北の丸スクエア」を850億円で購入したこと。
投資資金の流入によって高騰しているのは人気のある首都圏、都市部の一部分でファンドが買っている周辺ばかりです。
優良物件を購入したいREITや私募ファンドには、銀行からの融資の活発化も後押しをしているのです。
優良物件の高騰と共に、REITや私募ファンド向けに銀行の融資、利ざやを稼ぐ事ができるノンリコースローンの貸し出しも短期間で非常に過熱気味になっているということなのです。
同時に金融庁は「監督方針」の改正など金融機関の不動産向け融資への監督も強めております。
金融庁が警戒している理由の一つとして、不動産ファンドには、これまでに債務不履行を起こした事がなく、破綻の例がないのです。
銀行にとって物件を判断する調査やリスク管理の徹底が求められているのです。
今の不動産の価値は収益還元法という手法が定着しておりますが、この収益還元法とは対象の不動産が将来生み出すであろう純利益の価格時点における現価の総和で不動産の価格とする手法です。
この収益還元法は米国では主流だったのですが、1988年頃から外資系の銀行が日本の不動産物件を買い始め、買い手が付かなかった物件も、証券化をきっかけにファンドが買い手となり、収益還元法が行き渡ったとも言われております。
つまり今の地価上昇は、収益還元法とファンドの買いによって生じたものとも言えるのです。
この収益還元法がある限り、買い値がいくら高くてもバブルとは言わない、今の状況は「バブル」とは見ない不動産業界の人も多いものです。
では収益還元価格の適切さはというと、不安な一面もあります。
実際の賃料は変らないのに、賃料の上昇期待があれば、期間の純利益はそれほど上がらなくても還元利回りは下がり、不動産価格は上がるのです。
将来の賃料願望や将来の見通しで変わるのであれば、価格の妥当性の疑いは残ります。
実際に転売を繰り返し、賃料、物件価格は同じなのに販売価格が上昇したり、曖昧な物件評価で融資基準に見合わない物件も多く、金融庁はずさんな評価をしている企業に業務停止命令を出すなどで監督を強めています。
企業は景気回復から雇用も大幅に増加しております。
増員によりオフィスも必要です。
首都圏や都心部の大型ビルが満室になれば、その周辺の中小型のビルも埋まるでしょう。
オフィスビルは建っては売れる現状であり、東京都心の千代田区、中央区、港区の都心3区では巨大再開発でビル建設が予定されていますが、しばらくは買い手市場といわれております。
今後、外資の参入も加わると更なる過熱も考えられます。
金融庁の「監督方針」は、今後の不動産ファンドの成長のためにも、これまで以上に不動産リスク管理強化を必要としている点で歓迎すべきことだと思うのです。
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