2020年07月13日

価格上昇の可能性が高まるJ-REIT/アイビー総研 関 大介

1. 直近の価格動向

J-REIT価格は、ボックス圏での値動きとなっている。東証REIT指数は6月26日以降1,700ポイントを割り込んでいるが、1,650ポイントから1,700ポイントの範囲内で比較的安定的に推移している。
前々号では、一旦利益確定を行う必要性についてお伝えしていた。5月の価格上昇率TOP3が業績面での不透明感が強いホテル系銘柄で占められていたことから、単に株式市場との比較で出遅れ感からJ-REIT価格が上昇したためだ。
実際に6月10日の1,760ポイントが直近の高値となっているため、J-REIT価格が停滞しているように感じる投資家もいると思われる。
しかし6月中旬以降の個別銘柄の利回り動向を見ると、市場全体の価格上昇の余地が高くなっていると考えられている。その理由としては、投資家が利回りを求める「利回り狩り」の動きが顕著になっていることが挙げられる。


2. 「利回り狩り」の動きが本格化

具体的には、収益の安定性が高い物流系銘柄の価格上昇が続いている。それに伴い物流系銘柄の利回りは低下し、7月8日時点では利回りが低いTOP3銘柄(※)は、全て物流系銘柄となっている。
図表1は、利回りが低い3銘柄の直近1年間の利回りと東証REIT指数の推移を示したものになっている。物流系銘柄の6月の利回り水準は、利回り狩りにより東証REIT指数が2,200ポイントを超えていた水準まで低下している状態だ。
更に図表2は、4月以降の動きを示したものになっている。筆者が5月のJ-REIT価格上昇に違和感があった理由は、利回り狩りの動きであれば上昇するはずの物流系の価格が上昇しなかった(利回りが低下しなかった)ためだ。
一方で、6月中旬以降はJ-REIT価格全体では停滞しているように見える中でも、物流系銘柄の利回りは低下している。この点を見れば、利回り狩りの動きが強くなっていると考えられる。
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人の利回りは、図表1の通り、まだ低下余地はあるが、物流系銘柄の利回りは大幅に低下した状態になっている。
従って今後は物流系銘柄と同様に収益の安定性が高い住居系銘柄に利回り狩りの「ターゲット」が移ることになりそうだ。
更に企業業績の改善が現実化すれば、オフィス系銘柄に対しても利回り狩りの動きが波及する可能性もある。利回り狩りの対象が徐々に変移することで、J-REIT価格全体の正常な価格上昇が起きる可能性がある状態と考えられる。


(※)大幅な減配となっているインヴィンシブル投資法人は除外している。


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