野村不動産マスターファンド投資法人とトップリート投資法人の合併/アイビー総研 関 大介
今回は、野村不動産マスターファンド投資法人(NMF)とトップリート投資法人(TOP)の合併について記載します。
1. 本合併の内容と合併後の収益予想
NMFとTOPは、NMFを存続投資法人として9月に合併することを5月26日に公表しました。合併比率はNMF1 : TOP2.62となりましたので、TOPを1口保有している投資家は、合併後NMFの投資口2.62口が割り当てられます。
NMFは、2015年10月にスポンサーである野村不動産系3銘柄が新設合併して誕生していますので、本合併はNMFにとって2回目の合併となります。また本合併に伴い、TOPは8月29日に上場廃止となります。
NMFは、本合併によってジャパンリアルエステイト投資法人を抜き、業界第2位の9,331億円(物件取得額ベース)まで規模が拡大(※1)します。
また1口当たり予想分配金は、合併前の第2期(2016年8月期)2,760円に対して合併後の第3期(2017年2月期)に2,904円(※2)と5%程度の増配を想定しています。
但し、TOPの既存投資家から見れば、合併比率は1 : 2.62となるため、合併により大幅な減配となります。
TOPの2016年10月期予想分配金は9,900円ですが、NMFの第3期分配金を2.62倍しても7,608円にしかならないためです。
また端数投資口は売却され投資家に売却代金を支払いますので、1口保有するTOPの既存投資家は端数分の売却代金を得るものの、NMFの第3期で受け取れる分配金は5,808円(2,904円×2口)となります。
2. トップリート投資法人が抱えていた2つの課題とは
このようにTOPの既存投資家にとっては、厳しい内容となっていますが、合併となった背景にはTOPが抱えていた問題点があります。
一つ目は、合併説明会資料(※1)にも記載されているスポンサー構成の問題です。
TOPは、三井住友信託銀行をメインスポンサーとし、その他に王子不動産がスポンサーとなっています。
上場当初は、この2社の他に新日鉄都市開発がスポンサーとなっていました。
しかし新日鉄都市開発がジャパンエクセレント投資法人のメインスポンサーである興和不動産と合併し、TOPのスポンサーから離脱したため、物件取得による外部成長が難しい状況が続いていました。
二つ目の問題点は、大口テナント退去による収益変動リスクが高くなっていた点です。
特にイトーヨーカドー東習志野店(取得額89億円)は、(株)イトーヨーカ堂が2015年10月に40店舗の閉鎖を2020年2月までに行うことを公表していたため、テナント退去リスクが高くなっていました。
実際に合併公表後の6月3日に、2017年6月4日付の退去通知を受領しました。
またポートフォリオの取得額第2位(330億円)の晴海トリトンは、住友商事が2018年秋に東京・大手町に移転する影響を受ける懸念が高くなっています。
3. 合併によるメリットは?
一方で、NMFの既存投資家にとっては、分配金の増加をもたらす合併となります。
NMFはTOPの保有物件をNOI利回り5.4%と既存ポートフォリオのNOI利回り4.9%(※3)より高い利回りで取得できる想定となっています。つまりNMFの投資家にとってはメリットが大きい合併と言えるでしょう。
TOPの保有物件を高い利回りで取得できた背景には、TOPの直近決算期(2016年10月期)に1,715億円強(※4)であった鑑定評価額が、合併時に1,377億円まで20%近く低下する想定となっていることが背景にあります。
このようにNMFがより低い価格で取得することが、NMFの投資家にとってメリットとなります。
但し、本合併という事象だけを捉えれば鑑定価格を問題視する必要はありませんが、鑑定価格が不動産価格の高騰期でさえ大幅に低下することがあるという点は、今後は様々な問題に波及する可能性があると考えています。
それについては、次回に解説したいと思います。
※1:「合併説明会資料2016年5月26日」に拠る。
※2: 5月26日付「野村不動産マスターファンド投資法人とトップリート投資法人の合併後の平成29年2月期の運用状況の予想に関するお知らせ」に拠る。
※3: 第1期(2016年2月期)の実績値を年換算したNOI利回り
※4: 合併前に売却する1物件除外した金額
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