2015年07月22日

2015年上半期の投資家売買動向/アイビー総研 関 大介

 先日J-REIT市場の6月における部門別売買動向が公表されましたので、今回は2015年上半期の投資家売買動向について記載します。
上半期の売買動向を把握することは、7月上旬におけるJ-REIT価格急落の要因も理解しやすくなると考えられます。


1. 金融機関の買越し

上半期の売買動向の特徴として、まず金融機関(日銀の買入額を除外、以下同様)の大幅な買越しが挙げられます。
金融機関は上半期に月平均216億円の買越しとなりました。この金額のまま2015年下半期も推移すると、2014年の月平均155億円の買越しを超え、過去最高の買越し額になります。
この点から1月以降の10年国債利回りの乱高下は、金融機関の買越し姿勢に変化を与えていないと考えてよさそうです。日銀が2014年10月から実施している第二弾の金融緩和により、金融機関が国債市場から事実上閉め出されている状態が続いているためです。


2. 外国人投資家の売越し

次の特徴として、外国人投資家の大幅な売越しが挙げられます。上半期に外国人投資家は月平均で263億円の売越しとなりました。特に6月は500億円を超える大幅な売越し(図表参照)となっています。
外国人投資家は、2014年11月には500億円を超える買越しとなる等、短期的に差引売買金額が変動しやすい投資主体ですが、500億円を超える売越額は、J-REIT市場開設以来最大の金額となりました。
外国人投資家の売越しは、4月から軟調な展開が続いていた米国REIT市場が6月以降に下げ幅を拡大させていたことが要因の一つと考えられます。


3. 投資信託の姿勢

このように、共に過去最大となる金融機関の買越しと外国人投資家の売越しが錯綜する中で、価格安定に大きな役割を果たしていた投資主体がJ-REITを投資対象とする投資信託でした。
投資信託の2015年上半期の月平均買越し額は246億円となっています。
この金額は過去最大だった2013年の353億円には及びませんが、2014年の89億円と比較すると大幅な回復を示しています。


4. 7月前半の調整局面の売り主体は?

従って、6月下旬から深刻化したギリシャの債務問題に加え、7月に中国株式市場が急落したことで、投資信託のJ-REITに対する買越し姿勢が変化した可能性が指摘できます。
また東証REIT指数は2014年11月下旬から1,800ポイントを上回って推移していましたので、大幅な買越主体であった金融機関は含み損失を抱えることになりました。金融機関は様子見とならざるを得ない状況になっていたのです。

さらに東証REIT指数は2014年10月まで1,600ポイント台での推移が続いていましたが10月末に日銀が追加金融緩和を公表してから11月25日には1,800ポイント台まで急騰しました。このように1,700ポイントから1,800ポイントの間は実質的に「空白地帯」になっていましたので、7月上旬の下げ幅が大きくなったものと考えられます。


5. 今後の東証REIT指数は?

東証REIT指数は、7月10日を底として反発し14日には1,700ポイント台を回復しましたが、J-REIT価格の急落要因となったギリシャ債務問題や中国株式市場及び米国REIT市場の動向などは不透明感が強いため、短期的には懸念材料が残っている状態です。
一方で、需給だけで変動してきたJ-REIT価格が業績という面で「買い」が入る可能性が高くなってきています。
これは、オフィス賃貸市況の回復が明確になってきているためです。この点については改めて記載したいと考えています。

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