MIDリート投資法人のスポンサー変更について/アイビー総研 関 大介
今回は、MIDリート投資法人が4月10日に公表したスポンサー変更について記載します。
MIDリートの資産運用会社の株式65%を商業施設特化の日本リテールファンド投資法人と物流・インフラ施設中心に産業用不動産に投資する産業ファンド投資法人の2銘柄の運用を行う三菱商事・ユービーエス・リアルティ(MCUBSR)が取得することとなりました。これによりMIDリートのスポンサーは、関西電力から三菱商事に実質的に変更となります。
併せてMCUBSRは、本資産運用会社に代表取締役を含め役員5名(非常勤3名を含む)を派遣し運営を行い、本資産運用会社の名称をMCUBS MidCityに変更します。
また、MCUBSRは既に運用している2銘柄とMIDリートとの利益相反回避を目的として資産運用ガイドラインを変更します。具体的には、用途別比率をオフィス70%及びオフィス以外の用途30%とする点に変更はありませんが、その他用途をサービス・アパートメントとホテルとし、商業施設、産業用不動産を取得しないことを明確化しました。投資地域については、6月16日開催予定の投資主総会で可決されることを条件として、従来の関西圏中心から三大都市圏中心として海外不動産投資も可能とする規約の変更を予定しています。規約が変更となれば、積水ハウス・リート投資法人に次ぎオフィス系銘柄で海外不動産投資が可能となる2銘柄目となります。
さらに、MIDリートは、MCUBSRの株主である三菱商事及びUBSに対して第三者割当増資を実施し、その資金及び借入金、自己資金によって上野のオフィスビルを5月1日に取得する予定です。第三者割当増資と物件取得に伴い当期(2015年6月期)及び次期(2015年12月期)の業績予想を上方修正し、1口当たり分配金はそれぞれ5,900円(修正前5,850円)、6,000円(修正前5,900円)となる予定です。
投資口相場はこのスポンサー変更の動きを好感したようです。MIDリートの価格は、公表後最初の取引日となった13日終値が342,500円と前日比17%を超える上昇を示し、15日には2008年6月以来の35万円超えとなる356,000円まで続伸しました。
なお、今回のスポンサー変更は、合併時を除き資産運用会社が他の資産運用会社の筆頭株主となる最初の事例です。言い換えれば、通常は合併が伴うスポンサー変更の動きと言えます。しかしMCUBSRは、MIDリートを単独で存続させ物件取得という外部成長による規模拡大を図る基本方針を示しています。
一方で、MCUBSRの株主である三菱商事は、傘下の私募REITも含め商業施設や物流施設を中心に投資を行っていますので、MIDリートはオフィスビル投資を主軸とする唯一の銘柄となります。さらにMIDリートは、今回のスポンサー変更によりサブスポンサーとなったMID都市開発及びグループが保有するオフィスビルの優先交渉権を失うこととなっています。つまり、MIDリートはオフィスビル取得の可能性が低くなっているものと考えられる状態です。
しかしMCUBSRは、運用する2銘柄の外部成長実績に加え、MIDリートが加わり様々な用途の物件情報が「ワン・ストップ・チャンネル」で集積可能となるとして、前述の上野のオフィスビル取得実績とともに外部成長に自信を示しています。合併を選択せずMIDリートの外部成長を目指すことから今回のスポンサー変更は、MCUBSRから見れば受託資産規模の一層の拡大余地を広げるという目的があったものと考えられます。
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