2015年1月のREIT投資家売買動向/アイビー総研 関 大介
今回は、2014年に安定した上昇局面が続いたJ-REIT価格が、大幅な値下がりを示した2015年1月のREITの投資家の売買動向について記載していきます。
結論を先に示すと、1月の差引き売買金額は、2014年の傾向と大きな違いを示していませんでした。この要因は、東証REIT指数は、1月に大幅な騰落を示しましたが前月末と比較すると小幅な下落(11.41ポイント下落)であったためです。
図表は、日銀が2014年10月末に公表した追加金融緩和(QQE2)の影響を示すために2014年1月から10月までの月平均値と11月から2015年1月は単月の数値をグラフ化したものです。またグラフでは1月の差引売買金額の数値を明示しています。
まず2014年に最大の買越し主体となった金融機関の買越し額は、2015年1月に116億円となっています。この金額は、2014年10月までの平均値157億円には及びませんが、QQE2直後であった2014年11月の89億円を上回っています。また金融機関の2015年1月の総売買金額も、金融機関が大幅に買越しを行った2014年12月と同様に2,000億円を超えています。
つまり月間を通じて見れば、長期金利上昇の影響を受けていないという見方ができるのです。この背景には、国債の利回りが低下する局面だけではなく不安定な状態が続く場合にも金融機関が国債投資を行いにくいということがありそうです。国債利回りが上昇(価格は下落)局面になると、国債投資の含み損が発生するためです。3月の決算期を前にしていますので金融機関の2月の買越し額は減少する可能性がありますが、2015年も安定的な買越し主体になるものと考えられます。
次に、QQE2直後の2014年11月に500億円を超える大幅な買越し額を行った外国人投資家は、買越し額が減少しています。さらに2月には、外国人投資家が売越しに転じる可能性があります。その理由として外国人投資家は、11月の大幅買越しが示す通り日銀の政策動向を注視して投資を判断している点が挙げられます。日銀が実質的にインフレ率2%の実現時期を先送りした1月21日の金融政策決定会合の影響は、差引き売買金額で月間ベースでの影響を受ける2月に顕在化する可能性があるのです。外国人投資家が2月に大幅な売越しに転じた場合には、日銀がさらなる金融緩和を行ない明確な政策を打ち出すまで売越し基調が続くものと考えられます。
最後に、投資信託は1月に売越しに転じています。但し、2014年11月の200億円を超える売越し金額と比較すれば、1月の売越し額は低い水準と言えます。投資信託は、2013年にJ-REIT価格を上昇に導いた投資主体でしたが、2014年4月以降は売越し基調に転じています。J-REITは、1口当たり分配金などのファンダメンタルズの増加が緩やかであり、円安の影響で大幅増益となる株式市場に劣る状況が続いています。また景気回復の恩恵は、J-REITに先んじて株式市場にプラスの効果を及ぼすことになります。毎月分配型の商品が多いため投資信託が大幅な売越しに転じる可能性は低いものと考えられますが、J-REIT以外の投資信託に投資家の関心が続く状況となりそうです。
その他、個人投資家の大幅な売越し基調は続いていますが、本連載でも記載している通り公募増資や新規上場が続いている影響と考えられます。
また日銀は1月に84億円の買越しを行いました。年間900億円(月平均75億円)の配分から見るとやや高い水準ですが11月、12月は75億円以下の買越し額となっていましたので、QQE2後の買越額は月平均で75億円には達していません。従って日銀の買入れは、J-REIT価格の下支え効果が期待できる状況が続いています。
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