日本プロロジスリート投資法人の増資/アイビー総研 関 大介
今回は、日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283、以下NPR)が8月26日に公表した増資について記載します。
NPRのスポンサーは、世界的に物流施設の開発・運用を行っている外資系のプロロジス・グループです。NPRも同様に物流施設特化型の銘柄となっています。
保有資産の特徴としては、複数企業の利用を前提としたマルチテナント型の物流施設がポートフォリオの中心となっています。
従って大型物件が多く、今回の増資後でポートフォリオは4,000億円を超えることになりますが、保有物件の取得価格平均は1棟当たり140億円程度と物流施設系の銘柄では最大となっています。
J-REITは、増資で取得する物件の収益が通期で寄与するようにするため、増資を決算月の翌月に実施する事例が多くなっています。一方で、5月/11月決算のNPRの今回の増資は、9月と期中増資となりました。そのため増資による取得物件の収益は6ヶ月決算のうち半分も寄与しないことになります。
NPRはこの影響を回避するため、減価償却費を分配金原資とする利益超過分配を増額することとしました。NPRは恒常的に利益超過分配金を行う方針を示し、上場後全ての決算期で実施していますが、従来は減価償却費の30%程度を上限としていました。
今回の増資が期中増資となったことで、2014年11月期の当期利益ベースでの1口当たり分配金が減少することになるため、一時的に利益超過分配として減価償却費の40%を限度とする方針に変更し、分配金の減少を回避しています。
具体的には、2014年11月期の分配金は3,700円と従前の業績予想と同額ですが、当期利益での分配金は3,233円から3,120円に減少する影響を、利益超過分配金が477円から580円に増額することで実現する予定です。
2014年11月期の減価償却費に占める利益超過分配の36.5%になりますが、2015年5月期には通常の水準である30%以下(28.5%)に戻すこととしています。
このように今回は利益超過分配金が変則的になっていますが、通期で物件の収益が寄与する2015年5月の分配金が3,874円(うち利益超過分配金483円)と増加するだけでなく、借入金比率の低下も実現するものとなっています。
NPRの総資産に対する借入金比率(LTV)は、今回の増資で上場後初めて40%を切る水準になります。現在の金融機関の融資姿勢では、借入金を活用しLTVを高めることで、分配金を大幅に増加する手段もとることも可能です。しかしNPRは、投資家の需要も活発なこの時期には増資による資本(出資金)を多く集め、分配金の安定性を重視する姿勢を示したことになります。その理由は、投資家の需要が低くなり増資の実施が困難になった場合や一部テナントの退去により分配金が減少するような事態になった場合には、借入金により物件を取得する余地を大きくすることで対応が可能となるためです。この点でNPRの今回の増資は増資に応じる投資家だけではなく、既存投資家にとっても歓迎すべきものと考えられます。
一方で、分配金利回りは利益超過分配金を含む分配金水準でも3%を切る水準(9月3日時点)となっています。前述の通りNPRは、分配金の安定性や成長力にある銘柄と言えますが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が採用を決めた「MSCI Japanインデックス」の構成銘柄であることも投資口価格高騰の要因と考えられます。従ってGPIFの投資動向によって今後は価格が乱高下する可能性が高まっている点には注意が必要と言えるでしょう。
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