大和ハウスリート投資法人の増資について/アイビー総研 関 大介
今回は、3月3日に増資(以下、今回の増資)を公表した大和ハウスリート投資法人(証券コード3263、以下DHR)について記載します。
DHRは、大和ハウス工業株式会社(証券コード1925、以下大和ハウス)がスポンサーとなり設立され、物流施設を中心に商業施設にも投資を行う複合型銘柄です。
DHRが今回の増資で取得する物件は、スポンサーが開発した物流施設6棟、取得予定額251億円となっていますので、資産規模は21%増加し1,441億円まで拡大します。増資後のポートフォリオは物流施設が80%弱、商業施設が20%強という状態になり、物流施設の比重が今回の増資前と比較して高くなります。
物流施設は、近年取得競合が激しくなっている用途です。例えばリーマンショック前後で比較すると、物流施設を主要投資用途とする銘柄は、リーマンショック前に上場していた33銘柄のうち2銘柄でしたが、リーマンショック後に上場した11銘柄のうちDHRも含め4銘柄となっています。従って物流施設を主要投資対象とする銘柄は、スポンサーの物流施設の開発スピードがその銘柄の規模拡大スピードに直結する状況になっています。
DHRのスポンサーである大和ハウスの第4次中期経営計画(※1)に拠れば、計画最終年度の2015年度に物流施設を含む事業施設領域の売上高を2012年度の2,514億円から6,000億円まで増加させるとしています。
大和ハウスが規定する6つの事業領域で事業施設領域の増加率は最も高いものになり、売上高でみると2015年度に8,000億円としている賃貸住宅事業領域に次ぐ2番目の事業となる予定としています。
このような点から見ると、DHRの資産規模拡大に必要な素地は揃っているものと考えられます。
また上記の中期経営計画では、物流施設の開発にあたり従来のテナントの仕様に沿って開発したBTS型(Build To Suit)に加え、多様なテナント使用に対応したマルチテナント型も積極的に進めるとしています。DHRが保有する物流施設は、BTS型が100%という特徴を持っていますが、今後はマルチテナント型の物件が組入れられることになりそうです。
今回の増資で、DHRの1口当たり分配金は、増資での取得物件収益が通期で寄与する2015年2月期に8,200円と増資前の当期(2014年2月期)の7,800円(※2)と比較して5%以上増加するとしています。つまり今回の増資は、資産規模の拡大と分配金の増加を両立させた投資家にとって歓迎すべき増資であったと言えます。
一方で前述の通り物流施設の取得競合は激しくテナントの需要も高いため、物件価格の高騰(物件取得利回りの低下)は避けられません。
今回の増資で取得する物件の取得利回りは、既存物流物件の平均NOI(※3)利回り5.9%に対して全て下回っています(※4)。
今回の増資で分配金が増加する主要因は、増資前の1口当たり出資額を大幅に上回る価格で増資を行うことに拠るものです。
今後もDHRが資産規模を順調に拡大するためには、高い価格での増資を行うか、首都圏以外の地域での物流施設を取得することでポートフォリオの利回り低下を回避することが必要な状況が続くものと考えられます。
※1:大和ハウスグループ「第4次中期経営計画」に策定について。2013年11月18日付、大和ハウス工業株式会社公表
※2:DHRは2014年3月から投資口を2分割するため比較を行いやすくするため分割調整を行っている。分割調整前の1口当たり予想分配金は15,600円。
※3:NOI(Net Operating Income)とは不動産の賃貸収入から費用を控除した収益のことをいう。この場合の費用には会計上発生する費用である減価償却費を含まない。
※4:物件取得時にNOI利回りが公表されていないため、不動産鑑定価格の算出に用いられる鑑定利回り(還元利回り)で比較している。
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