REITの制度改革について/REITアナリスト 山崎成人
金融庁がREITの制度改革を検討中のようです。制度改革と言っても、内容的には株式並みの制度をREITに適用するものなので、決して目新しいものではありませんが、実現すれば、REITに新たな可能性をもたらすかもしれません。
検討されている中でも、自己投資口の取得と無償減資が注目です。
自己投資口取得は自己株式の取得と同じで、市場での投資口価格が割安と判断した場合、投資法人自らが投資口を購入できる制度です。 そして、取得した投資口を消却すれば発行済投資口数が減少し、過去の増資によって希薄化した投資口の回復が可能となります。又、投資法人の中には、短期借入金の導入がなく、潤沢な現預金を留保している銘柄もありますが、この手持ち現預金の活用策が少なく、単に流動性確保だけに使われている面もありましたので、制度改革が実施されれば有効活用の途が開けます。
次に、無償減資はいくつかの活用方法が考えられますが、先ず浮かぶのはポートフォリオの再構築を図る為に、保有資産の一部を売却し、売却損を減資した分で補填する方法です。勿論、この方法は投資家にとって簡単に納得出来ることではありませんが、例えば、新たなスポンサーによって投資法人が再出発しようとするときには、再建の有効な手段になります。
現在の制度では、不振に陥っている投資法人に新たなスポンサーが乗り込んでも、有効な再建方法がなく、従前の欠陥をそのまま引き継ぐしかなく、結果として投資法人の評価が上昇しません。
換言すれば、REITには敗者復活の方法がない状態から、手術を施す手段が生じる事になります。
米国REITでは価値反転型の買収という実績もありましたが、日本のREITでは、単にスポンサークレジットを利用する程度しかなく、価値反転型買収は成立しません。
それが、今回の制度改革によって可能となるかも知れませんし、ひいてはREIT市場にダイナミズムが加わることにもなります。現在のREITでは、一度投資口価格が低迷すると負の連鎖からは脱出できませんでしたので、敗者復活の途を作るのは合理的です。
但し、これらの制度改革は未だ決まった訳ではなく今秋に本格検討に入るようなので、今後の展開が注目ですが、REITが応用問題に取り組める環境作りは必要だと思いますし、応用問題を解くために何をすべきかを問われますから、資産運用会社の質も関係しますので、REITの活性化に繋がると思います。
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