REITのショートレンジ取引とその影響/REITアナリスト 山崎成人
東証の売買動向を見ていると、外国法人と証券会社がショートレンジの売買を活発に繰り返しているように見えますが、特に外資のようにドル建てで投資利益を図る主体にとっては、為替動向が重要です。
今のように円高になれば、円をドルに換えるだけで、利益は嵩上げされますから、円高基調であれば、投資を活発化させます。
但し、配当金目当てでは、決算月と決算発表、そして配当金の支払い時期までは最大で3ヶ月のタイムラグがありますから、配当金を待っていては為替リスクが大きくなってしまいます。
従って、短期売買を繰り返し、売買益をドルに換えれば円高傾向では利益が増えますので、為替動向の方が重要な要素となります。
REITのファンダメンタルは捨象して、投資口の流動性の高い銘柄を選んで売買を行う事で投資効果を上げられますから、銘柄の見方も異なってきます。
こうなると日々の投資口価格の動きはREITの実態とは離れた要素によって左右されます。
それでは、どういう要素なのかを考えると、それは日本のマクロ経済動向、政治動向、そしてグローバルな投資市場環境という事になります。
不動産を考えるときに、先ずマクロ経済や政治動向を織り込むという人は存在しませんし、ましてやグローバルな投資環境となれば見通すことは不可能です。
アジアの一国に過ぎない日本の投資市場も、既に世界の投資戦略の中に組み込まれてしまっていますので、最早国内だけの見方では通用しません。
不動産価値についても、取引動向のようなミクロの情報を積み上げても、段々と意味をなさなくなります。
このように考えると、投資法人の出す説明資料の内容も換えていく必要がありそうです。
勿論、グローバル投資環境等の説明は無理ですから、資産価値を直接左右すると考えられる収益動向に関する説明が主になります。
それも、マクロの空室率や賃料動向ではなく、保有している資産の過去の動向と、それに基づく今後の予想です。
単に賃貸市場が回復するであろうという見通しではなく、様々なデータを活用して論理的に検証する手法が求められます。
先日の日本プライムリアルティ投資法人の決算発表では、有効求人倍率とオフィスビルの空室率との相関についての説明がありましたが、このような試みも必要となります。
但し、もう少し堀り下げた説明でないと説得力がありませんので、こういう試みに多くの投資法人が挑戦することが必要なのではないかと思います。
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