2009年11月06日

地震リスクについて/REITアナリスト 山崎成人


 REIT投資における地震リスクについては、REIT誕生初期に指摘を受け、各銘柄が決算時にPML値(大地震の際の予想最大損失率)を発表する事で説明をしてきた経緯があって、最近では地震リスクが話題に上る事もなくなっていました。
ところが、新しくREIT投資を始めた方達から地震リスクについて質問を受ける事が増えてきましたので、改めてこのリスクについて説明したいと思います。

PML値というのは、475年という期間で一度起こると想定される最大規模の地震の際に、どの程度の被害を受けるかを専門機関が計算した理論値です。
この値は%で表示(建築費に対しての率)され、多くの銘柄が決算発表資料の中でポートフォリオPML値を発表しています。
決算発表資料には個別物件毎のPML値も発表されていますが、ポートフォリオPML値は保有物件の地域分散を考慮した数値になっているので、各物件の単純平均値より低くなっています。
大半の銘柄が一桁の数値に収まっていますので、投資リスクとしては余り大きくはありません。
勿論、何処かの地域で大地震が起これば何らかの被害は予想されますが、その損失率は高くはありませんから、内部留保されている建物減価償却費で復旧出来るレベルの被害で収まると想定されます。
そうは言っても日本は地震国ですし、阪神淡路大震災でのビルの倒壊を見れば、投資対象のビルやマンションが倒壊してしまうのではないかという危惧を感じるのも当然です。
このような投資家の危惧に対して、PML値はかなり低い数値を示していますから、本当なのか?という一抹の不安を感じる人もいるかもしれません。
実は、REITの保有物件のPML値が低いのは、耐震性を高めた建物で構成されているからで、新耐震設計建物とか耐震補強工事済み建物のみを取得しているからです。
又、個別のPML値が高い一部の物件では地震保険が付保されていますから、万が一の際も保険で手当されています。
それでもREITの保有物件が集中している東京に大地震が起きたらという心配もありますが、保有物件全てが都心に集中している森ヒルズリート投資法人のポートフォリオPML値は1.32%と発表されています。
この投資法人の保有物件には制振工法や免震工法を採用した建物が多い事もPML値を下げていますが、このような工法を採用していなくても、新耐震設計建物は地震に強いという事が言えます。

筆者は阪神淡路大震災の時に、地震後一週間で現地に入り、建物被害状況の調査を行い、復旧工事を手配しましたが、復旧費用の大半は建物被害ではなく、敷地と埋設配管の修理費でした。
この時に、地震の数日前に竣工したマンションがありましたが、このマンションでは殆ど被害が認められませんでしたので、やはり新耐震設計の建物は強いなと実感しました。
この時の経験から、地震に因る建物被害は、新耐震設計以前の建物に集中する事が分かりましたし、又、最も深刻な問題は被災者の救援とケアーであることだと理解しました。

以上の説明で分かるように、投資家としてREIT投資における地震の問題は、他の投資リスクよりは遥かに小さいと言う事です。 それでも心配な方は、各投資法人の決算資料でPML値を見て、少しでも小さい投資法人を探すのも一つの方法だと思います。

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