2008年12月05日

師走の風/REITアナリスト 山崎成人


 12月に入ると、年の瀬の実感が少しずつ湧いてきますが、不況感の漂う中での師走は何となく憂鬱な思いを促進させます。また、来年も景気はさらに悪化するという見方が多く、光は遠いという予感がしますので、身構える企業や個人が多いかと思います。
最近の企業の動向を見ていると、景気動向による雇用調整の素早さが目につきます。
かつては企業はなかなか雇用調整まで踏み込みませんでしたが、今は真っ先に着手するようになり、完全に欧米型経営に移行しています。
政府の景気対策も迷走気味ですが、現在の世界不況の中でどういう対策があるのかという事になると、かなり難問だと言えます。
それに米国・欧州の経済が今後どのように推移するのか、そして新興国経済にどの程度影響を与えるのかという不確定要素が多く、日本にとって何が必要なのか、有効なのかは、簡単には分かりません。
金融情勢を見ても、既に0.3%まで下がった金利水準では有効な金融政策は取れないでしょうから、後はマネーサプライを増やすぐらいしかありません。
一方、金融機関は融資を絞っていますから、仮にマネーサプライを増やしてもお金の流れる先がありません。
何時でもそうですが、不況の時に一つの方法で立ち直るということはありませんから、先ず、景気の落ち込みを防ぐ、又は下支えするという政策がメインなります。
然しながら、自動車産業は、既に国内市場に頼る構造にはなっていませんから、日本の政策で活性化出来る訳ではありません。
ITも光ケーブルの普及とパソコン性能の向上が一定度進みましたので、景気回復の起爆剤となるような手法が見当たりません。
後は、不動産ですが、これは個人所得が減少し需要が減退していますから、供給側への対策では効果が上がりません。

こう考えると有効な対策は見当たりませんが、私は以前から、「REITの活性化が不動産を下支えする効果がある」と主張しています。
REITの取得需要は、順調な市場状態であれば年間1兆円を超えると予測されますので、REITの機能を使って下支えすることも考える必要があります。
REITが開発型物件の取得を活発化すれば、建設需要も喚起しますから、景気対策としては有効です。また企業業績が低迷すれば、保有資産の売却によって凌ぐという方法も採られますが、この場合にも、REITが取得出来なければ売却先がありません。
このように考えると、REITの活性化は不動産・建設業界の下支えだけでなく、企業の業績不振の歯止めにも効果が期待出来ます。
REITとは、投資の導管体で、エクイティ(公開市場で取引される投資口)とデット(金融機関からの借入・投資法人債)で構成されている事業体ですから、REITへの融資を活発化することでも活性化可能です。
金融機関の不動産融資という面でも、REITへの融資は完全にお金の流れが分かりますから、透明性は最大です。
しかも、導管体であるREITの利益は、投資家(投資市場)に全額還流しますから、政策的な措置を講じてもブラックな部分が少ないのもメリットです。
更に、現在のREIT市場ならば、年間配当金利回りが10%以上になっている銘柄も数多くありますから、REITを維持するという前提を明確にすれば、公的年金等の投資先としても魅力があります。
勿論、REITの活性化によって景気回復が促されるという短絡的な見方は成立しませんが、少なくとも不動産・建設需要が下支えされ、不動産の流動性が確保され、またそれにより投資市場へ利益が還元されるというサイクルが機能することは確かです。
この意味でも、政府も金融当局も、REITの機能を活用することを考えるべきだと思います。


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