ファンドの悲鳴/REITアナリスト 山崎成人
不動産私募ファンドの資金調達がほとんど止まっていて、ファンドの仕組みが機能しなくなっています。
私募ファンド側からは、そもそも不動産証券化の仕組みは国が作った制度であり、しかもデットの導入は不可欠な要素なのに、それを止めるというのは納得出来ないという声が挙がっています。
私募ファンドの資産規模は、既にREITの倍に達していると言われていますから、確かにこのままで推移すれば、色々な影響を与えます。
それでも、金融当局がなかなか動かないのは、ファンドを使った不動産の転がしビジネスというのが実態だからです。
ファンドは大量の不動産を取得しますが、それを短期に転売して転売益を稼ぎます。
これを頻繁に繰り返せば、不動産価格は根拠なく上昇し、何れは破綻しますから、放置する方が大きな問題となるのです。
不動産が一方的に上昇した後で急落すれば、減損会計によって企業の財務が痛みますし、金融機関の不良債権も増大します。
これではバブルの二の舞ですから、当然政策当局は座視出来ません。金融機関も再び不動産バブルによって体力が衰えれば、もう救済はありませんから、ここは何としても自助努力で突破しなくてはなりません。
こう考えれば、金融機関が不動産融資を甘くする可能性はほとんどありませんので、いくら騒いでも不動産融資姿勢は当面は変えないだろうと思います。
元々、不動産を転がして利益を得るというのは、ビジネスモデルとしてはマイナーであり、ニッチの業種でもあります。
このビジネスがどういう結果をもたらすかは、過去40年の不動産ヒストリーを見れば自明の事です。こういうビジネスモデルに手を染めて何時までも続けたいと思う事自体が無茶なのです。
手仕舞いの時期を失して破綻するのは過去を見れば当たり前ですが、自分だけは違うという慢心がそれを忘れます。また、金融機関も過去に何度も甘い不動産融資によって痛い思いをしていますから、また繰り返すようでは救いがありません。
こう考えると、今の不動産融資の厳しい状態は当たり前なのです。
一方、REITはどうでしょうか。
確かに、REITの資金調達環境も悪化していますが、REITは取得した不動産を長期保有しますから、その間に不動産価格が上下しても直接の影響はありません。
そして、不動産の長期保有主体という事で、不動産価格の安全弁としても機能します。
不動産価格が下がっても闇雲に放出しませんし、逆にある程度下がって利回りが上昇すれば買いに回りますから、良質な不動産の価格の暴落は止められます。
このようにREITと私募ファンドは似て非なるものですが、一般的にはその違いが理解されていません。ファンドと言えば全て同じではないのですが、この事を理解していない政治家やマスコミも多いようです。
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