2007年11月09日

J-REITのM&A/REITアナリスト 山崎成人


イーアセット投資法人から、イーアセット投資法人の資産運用会社であるアセット・リアルティ・マネジャーズの株式が、米国の不動産投資顧問会社の系列にあるラサール インベストメント マネジメント(株)に譲渡される事になったとの発表がありました。
この件については、アセット・リアルティ・マネジャーズが、今日の午前中にアナリスト説明会を開催しています。
案内メールが来ましたが突然の事なので私は都合が付かず出席していませんが、投資法人から第3者割当増資と物件取得・譲渡の発表がありましたので、先のビ・ライフ投資法人、LCP投資法人、クレッシェンド投資法人と同種の動きであろうと考えられます。

但し、先例と異なるのは、資産運用会社の株式(非上場)全株をイーアセット投資法人のオリジネーターであるアセット・マネジャーズ等11社から譲り受けて、ラサール インベストメント マネジメントの100%子会社になる点です。
これを簡単に言えば、オリジネーターがそっくり交替したということです。
旧オリジネーターのアセット・マネジャーズは私募不動産ファンドの運用会社ですが、JREITの成長を見て、2005年9月にイーアセット投資法人を上場しました。しかし、目論見が外れて株価が低迷し、お荷物化していましたので見切りを付けて売却したものと考えられます。
一方、買い手のラサール インベストメント マネジメントは、米国の不動産投資顧問会社であるラサール インベストメント マネジメント インクの日本法人に当り、既に私募ファンドで国内の不動産を複数所有しています。
今回、イーアセット投資法人が取得する資産も、ラサール インベストメント マネジメントからの取得であり、第3者割当増資とセットの外部成長は、LCP投資法人、クレッシェンド投資法人の事例と同じです。

なお、今回の発表で目新しい点は、イーアセット投資法人が「イオンモール武蔵村山ミュー」(旧名称;ダイヤモンドシティ・ミュー)を取得することです。
この物件は日産の工場跡地に建てられた複合型商業施設で昨年の10月に竣工したマルチテナントの大型商業施設で、オープン当初はニュースにもなりました。
この物件が早くもJREITの手に渡ることになったのですが、私はこの取得については懐疑的です。
先ず、取得価格が鑑定評価額より11億円上回っており、年間賃料から見たグロス利回りは4.88%になっていますが、この数値は、イーアセット投資法人が保有している「ラ・ポルト青山」(青山通り沿いの商業店舗ビル)の5.63%より遥かに低いのです。
商業施設としてみた場合、どちらに価値があるかは一目瞭然ですが、新しくオリジネーターとなるラサール インベストメント マネジメントは、まさに極限天井価格で首尾よくJREITに譲渡出来たという事になります。

先のクレッシェンド投資法人とモルガン・スタンレー・グループとの提携でもそうでしたが、JREITと外資系の提携は、JREIT投資家よりもオリジネーターに利のあるケースが多くなっています。
何れにしても、今後もこのような動きが続くかもしれませんので、投資家は充分な注意を以って観察する必要がありそうです。  

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