2007年10月12日

不動産証券化商品の今後/REITアナリスト 山崎成人


 金融商品取引法によって不動産私募ファンドに大きな影響が出ているようです。
JREITも私募ファンドも、不動産投資による収益を投資家に分配する仕組みは同じですが、市場上場型のJREITと違って、私募ファンドではいくつかの新たな対応が必要となります。
また、少数私募の場合には目論見書の作成も省略していましたから、新たに目論見書を作るとなると、その労力も大変ですし費用も嵩みます。
投資口証券の販売時にもリスクの説明が義務付けられていますので、市場流動性のない私募ファンドではJREITに比べて高い投資リスクの説明も必要となります。
またJREITは、現在投資口価格の調整局面に入っていて、投資口価格の低い銘柄は6~7%の年間利回りになっていますので、これ以上の投資リスクに見合ったリターンを確保するのも大変です。

 このように考えると、かつての蜜月期とは様変わりですが、元々、他人の資金を預かって不動産投資を行う事は大変な仕事ですから、淘汰は必要です。
私募ファンドはJREITを凌ぐ規模にまで成長しましたが、JREIT41銘柄でさえ淘汰を受けているのですから、私募ファンドが淘汰されない事自体不健全だと言えます。
更に、米国サブプライムローン問題を契機として、RMBS等の住宅ローン債券証券化商品の投資リスクが高まっていますので、これらを全て含んだ広義の不動産証券化商品は曲がり角に来ているように思えます。

 これらの問題の根っこには、有価証券市場が不動産リスクに不慣れな事と、不動産価格の循環変動を軽視したためだとも言えます。
その意味では、一旦冷静になって改めて不動産リスクを織り込んで投資判断を行う良い機会ではないかと思います。
そうは言っても、不動産リスクを定性的に捉えるのは難しいので、不動産価値や投資口価格の変動が大きいと、不安が不安を呼ぶ事にもなり、投資家が疑心暗鬼になり過ぎる傾向もあります。
これらを抑止するには、有価証券投資の立場で不動産投資リスクを解説する専門家が必要ですが、なかなか人材が育ちません。
このような状況は有価証券市場にとっても好ましい状態ではありませんから、供給サイドの銘柄側にとっても、中長期的な視点で人材を育むという姿勢も必要です。

 金融商品取引法によって、私募ファンド等の不動産証券化商品の今後が厳しくなるのは避けられませんが、小手先の手段によって逃れるのではなく、投資家・ファンド側双方とも、不動産リスクをどのように捉えるのか、リスク情報の発信をどうするか等のインフラを整備することが必要だと言えます。

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