2007年02月14日

J-REITの導管性/REITアナリスト 山崎成人


 JREITが高い配当金を出せる理由として、投資法人への非課税が挙げられますが、この優遇税制は、投資法人は単なる投資資金を集める器であって、導管体としての機能しかないという考え方に拠ります。 従って、課税客体は投資法人がパス・スルーで利益を分配する投資家となります。
この仕組みはJREITを始めたとしたファンドに対して適用されますが、JREITにとっても生命線とも言える税制です。

ところが、最近業界の話題に上がっているのは、一部の銘柄でこの優遇税制が受けられなくなるではないかという憶測です。
その根拠は同族会社の規定にあります。 同族会社とは少数株主の出資によって成り立っている会社であり、具体的には上位3人の投資主の合計持株比率が50%超となると、同族会社と認定されます。
仮に、JREIT投資法人が同族会社の認定を受ければ、導管性が否認され、投資家への分配金原資に対して法人税が課税されるという、株式と同じ仕組みになってしまいます。 もし投資法人が課税客体になれば、配当金はパス・スルーの場合に比べて、約40%減になりますから、投資家にとっても大きな問題となります。
公募によって投資口を販売し、不動産投資信託市場で日々売買されているJREITがそのような事態になるとは、誰も想像すらしませんでしたが、今年の1月から東証が大量保有報告を義務付けたことで、一部の銘柄で上位3者の持株比率が50%に迫っていることが分かりました。
但し、この上位投資主の中には、信託銀行の投信口が含まれていますので、純粋に3者とは言えませんが、同族認定の規定では信託銀行も1グループと見られてしまう可能性が高いのです。

この事態を回避するには、上位3者の投資家が保有投資口を売却するか、投資法人が増資を行って比率を下げるしかありませんが、対象となっている銘柄は増資を簡単に行うことが出来ない環境(株価が低迷していて増資による投資口の引受け難しい状態)にあります。
従ってまずは、上位3者の投資主の売却を期待することになります。 特に、投信信託は自らが損を招くような投資行動を行うことは可笑しいのですが、インデックス運用となっているために、自動的に買い増してこのような保有比率になってしまい、簡単には売却は出来ないということのようです。
普通に考えれば奇妙な事ですが、もたもたしているうちに同族認定を受けて配当金が下がれば、損をするのは投資信託の投資家です。
JREITを組み込んだ投資信託はかなりの数に上りますし、今では郵便局でも扱っています。 恐らく一部の銘柄がこのような事態に陥れば、大半の投資信託が影響を受けますので、その影響度は大きくなります。
ところが、この事に関して渦中にある銘柄からは何の発表もありませんし、東証も何のアピールもしていません。
株式のように監理ポストに入れてはという考え方もありますが、導管性が否認された事では上場廃止基準には該当しないという事で、今のところ動きがありません。
それぞれ関係部署に言い分はあるとは思いますが、結局損をするのは投資家ですので、杓子定規なことを言っていないで適切な対応を取る必要があります。
また、主幹事証券会社は責任を感じて積極的に動いて欲しいものですが、証券会社サイドは税制当局に信託銀行を同族認定規定から除外して欲しいとアピールしているようで、自分達の蒔いた種を税制当局に押し付けるような動きになっています。
私のような立場から見れば歯痒いの一言に尽きますが、これも世の中の実態とも言えなくもありません。

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