J-REIT市場の今後/REITアナリスト 山崎 成人
毎年2月になると、雑誌や新聞などがJREITを取り上げることが多いようで、この時期にはマスコミからの問い合わせが殺到します。特に今年は、JREITの株価に勢いがありますから、今までの取材姿勢とは少し趣が変わって、株価高騰に対する懸念よりは、実際の投資判断に役立つアドバイスという要請が多くなっています。 また、取材するマスコミの方からは、JREITが以前より難しくなって理解するのに苦労するという声も寄せられます。 記者の方の中には、JREITの解説本を何冊か読み、更にこのコラムのバックナンバーも読んだ上で質問される方もいますが、それでもJREITの現状をどのように見れば良いのかはなかなか理解出来ないようです。
このような方たちでも苦労していますから、一般の投資家の方にとって、今のJREITをどう考えれば良いのかは頭痛の種ではないかと思われます。そこで私なりの考え方を申し上げてみようと思います。
まず、これからいくつかの雑誌でJREIT特集が組まれると思いますので、それらも参考にされる良いと思いますが、端的に言って、今のJREITにはマイナス要素が少なく、しばらくは今の勢いが続きそうです。 唯一の懸念材料は日銀の利上げですが、これも今夏の参議院選挙まではドラスティックな動きがなさそうなので、JREITの勢いを大きく削ぐ程ではなさそうです。
一方、投資市場に流れ込む資金はさらに増え続ける様相を呈していますし、JREITも市場が大きくなったことでその恩恵をより受けそうです。
こう考えると、今のJREITは良い事づくめにも思われますが、必ずしも楽観は出来ません。
まず、参議院選挙後は日銀も動くでしょうから、秋以降には金利上昇が予想されますので、その引き上げ幅によってはJREIT株価の調整も行われそうです。
然しながら、一方では日本の不動産は海外に比べて割安だとか、JREITの利回りも国債と同程度でも良いのではという、やや行き過ぎた論調も出ています。 特に米国REITを引き合いに出して強気論が展開されているようですが、米国と日本のオフィスマーケットは実際の需給関係に相違がありますから、内部成長期待で利回りを低下させると市場が期待する程の成長がなく、投資リスクは高まる一方にもなります。
さらに、JREITは二極化が進行していて、質の高い資産を保有している銘柄の株価は2%台の利回りまで低下していて、もうそれほど上げる余地がありません。 配当金も保有物件の建物築年数を考えると今の額が上限に近いと言えますので、現在以上のパフォーマンスを期待するのには無理があります。
従って、今のJREITは天井近くで推移していますので、悪材料が出ないうちはこのまま天井を這いますが、いずれは下がる方向に動きます。
ここで注意したいのは、株価上位銘柄が天井になったことで、その他の銘柄に資金が流れ、実体を伴わない下位・中位銘柄の株価上昇が起きることです。 この動きに釣られて無原則に投資を行うと火傷を負いますので、これが目下の注意点です。
今の市場では銘柄に対しても甘い見方が強くなりますから、中長期投資姿勢の投資家は距離を置く必要があります。 銘柄の持つ欠点が改善されて株価が上昇するのは合理的ですが、市場のフィーバーによって上昇した株価はいずれメッキが剥がれます。
この意味でも、しばらくは株価上昇の理由が何かを見極めながら投資判断を行うことが必要だと言えます。
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