J-REITの価格上昇基調が続くための条件とは/アイビー総研 関 大介
1. J-REITの価格上昇基調は一服、機関投資家の利益確定売りが影響か
8月末まで続いていたJ-REIT価格の上昇基調は、一服する状態となっている。東証REIT指数は、図表1の通り、6月上旬から8月下旬まで上昇が続き、月末は1,917ポイントで取引を終えた。2022年11月以来となる月末時点で1,900ポイントを超えた。
一方で9月に入るとJ-REIT価格は停滞基調となり、10日時点の終値1,907ポイントは25日移動平均の1,911ポイントを下回っている。9月の中間決算期に伴う機関投資家の利益確定売りがJ-REIT価格に影響していると考えられる。
すでに個人投資家は、図表2の通り、6月から利益確定の売り越し基調が続いており、5月以降に買い越しに転じていた投資信託も8月には売り越しとなっている。さらに価格上昇を支えてきた事業会社の買い越し額は、8月は5億円程度まで減少している。
2. 米国長期金利の低下が上昇の条件
一方で、外国人投資家が今後の安定的な買い越し主体となる可能性が生じている。FRB(米国連邦準備制度理事会)が利下げに転じる可能性が高くなったことで、米国10年債利回りが9月に入って急速に低下しているためだ。
トランプ米大統領の関税政策によって、米国長期金利が4月以降再上昇し、外国人投資は5月から7月まで売り越しとなっていた。8月にはFRBの利下げ観測が強くなり買い越しに転じている。
米国10年債利回りは4月以降に4.2%から4.5%程度で推移していたが、9月10日時点では4.0%程度まで低下している。3%台で推移する期間が安定的に続けば、2024年8月以来となるが、その時期は外国人投資家が736億円と大幅な買い越しを行っている。
つまり、外国人投資家が米国長期金利低下により安定的な買い越し主体となり、9月は売り越しの可能性が高い国内投資家に代わると考えられる。
投資用途としては、物流系の反発が想定される。外資系スポンサーの銘柄が多いことに加え、利回りの高い状態が続いているためだ。
例えば、日本プロロジスリート投資法人とGLP投資法人の利回りは、9月10日時点でそれぞれ4.65%、4.56%と市場平均の4.64%と同程度となっている。時価総額がそれぞれ6,000億円を超える大型銘柄であり、外国人投資家の買いが期待できる状態となっている。


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