2013年4月期決算銘柄にみるJ-REITの現状と今後の価格動向/アイビー総研 関 大介
J-REITの価格は、4月に始まった下落基調から持ち直しに転じています。東証REIT指数の6月平均値は1,305ポイントでしたが、7月2日には5月29日以来となる1,400ポイントを回復しました。
冒頭に4月からの下落基調と記載しましたが、東証REIT指数を半期ベースで見ると、昨年下半期(2012年6月末から12月末)に16%上昇したのに対して今年上半期(2012年12月末から2013年6月末)には25%の上昇となっています。このような点から見れば、J-REITの価格は順調に上昇していると言えるでしょう。
ただし、J-REITの価格は、5月の下落時にも見られた通り海外市場に混乱要因が発生すれば弱含む可能性が高い点には注意が必要です。また日銀のJ-REIT買入れ枠は、既に上限に近付いているため大幅な下落局面になっても買い支えの効果はほとんど期待できない点も考慮しておく必要があります。
さらに、海外市場の混乱要因が発生しなくても、J-REITはファンダメンタルズから見て当面は順調な価格上昇が期待しにくい状況です。具体的には、オフィス市況回復の足取りが遅いため1口あたり分配金の減少に転じている銘柄が多くなっているのです。
6月に決算発表を行った4月/10月決算銘柄の1口あたり分配金を見ると、4月/10月決算銘柄のうち、住居を主要な投資対象とする銘柄はスターツプロシード投資法人(証券コード8979)だけで、他の銘柄はオフィスを主要な投資用途としている銘柄です。オフィス系銘柄は、減配となる要因は各銘柄によってやや異なる点もありますが、結果として今後の1口あたり予想分配金が2013年4月期実績値を下回ることを想定しています。
J-REITの業績予想は、保守的に見積もっているため大半の場合には実績値が予想値を上回ることになります(※)。従ってプレミア投資法人(証券コード8956)やいちご不動産投資法人(証券コード8975)は、2013年4月期とほぼ同様の水準の予想分配金と言えるでしょう。しかし、その他3銘柄については、2013年10月期に減配になる可能性が高い業績予想となっています。
いわゆる「アベノミクス」による景気回復の指標が多く出始めていますが、オフィス系銘柄の置かれている状況は上述の通り厳しいものになっています。その理由として、オフィスビル市況の景気に対する遅効性が挙げられます。大半のオフィスビル契約は、解約予告期間が6か月となっています。つまり入居企業が移転を決断しても、実際に移転できるのは6ヶ月後となります。自民党が政権に復帰してからまだ6ヶ月程度であり、為替が円安に転じた効果はまだ企業業績には反映していないのです。例えば、オフィス市況の回復に繋がる入居企業の拡張移転やより良い立地の物件への移転を決断する時期が、今年度第一四半期(6月)決算の数値を確認してからとなるとその時期は早くても来年以降になります。
このように、オフィス系銘柄の予想分配金が増加する可能性はあまり高いものと考えられません。さらにオフィス系銘柄は時価総額を大きい銘柄が多くなっています。このため、J-REIT全体の価格動向としては、やや厳しい見方をしておく必要があると考えられます。一方で景気回復により、オフィスビル市況が来年以降大幅に改善すると想定している投資家であれば、オフィス系銘柄の減配予想が続き投資家の警戒感が強まっているこの時期は投資妙味がある時期と言えるでしょう。
※物件売却や増資が業績予想の決算期の生じた場合には、予想分配金が大きく変動することがある点には注意が必要。
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